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日本のデンシノベルから世界のデンシノベルへ。今、『ghostpia』がSwitchに移植される理由 #BitSummit

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みなさん、超水道の名を覚えているだろうか。
BitSummit Vol.6の中に、ものすごく懐かしい展示があった。room6によるNintendo Switch版が発表されたデンシ・グラフィックノベル『ghostpia』である。
本作の元になったiOS版は、2015年にクラウドライブ(※すでに閉鎖)で資金調達を行って立ち上がり、現在4章まで配信されているが……制作元サークル超水道のメンバーが社会人になって時間が無くなってしまい、その更新ペースは非常に遅くなっていた。
なぜ、今になってSwitch版が発表されたのかと思って取材してみると……そこには、予想以上の一大プロジェクトになった『ghostpia』の姿があった。

超水道とは、2011年にアプリ『森川空のルール』を発表し、学生作品と思えないクオリティが話題を呼んで一躍有名になった大学生サークルだった。
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その後に『ヴァンパイアハンターHIROSHI 〜Around the Clock Show!〜』が10万を超えるヒットとなって勢いを得て、『ボツネタ通りのキミとボク』、『佐倉ユウナの上京』を立て続けにリリースして大作『ghostpia』に着手するわけだが……彼らが就職してアプリ制作のペースは大きく落ちた。

アプリで有名になった作者は独立してアプリ制作一本で打ち込むことが多いが、超水道はアプリ内に物語を阻害する広告を入れないポリシーを貫いていたし、主要なファン層が学生で基本無料的なマネタイズに適していなかったこともあり、独立するほどの収益を得ていなかったのだ。
そうして開発スピードが落ちてから超水道ブームも勢いが落ちてしまったようにも見えるのだが……その中で『ghostpia』をSwitchに移植する理由と、アプリの今後について超水道のミタヒツヒトさんに聞いてきた。

ゲームキャスト:
まず、移植の経緯を教えてください。あ、ここはroom6さんもお願いします。

room6:
『ghostpia』が世界で通用すると思ったし、「通用させたい!」っていう思いがあったのでこちらからお願いしました(※今回移植を担当するroom6さんは、ghostpiaのクラウドファンディングでも大口資金提供をした元からのファンである)。
Switchでのビジュアルノベルがまだ数がなく、デバイスとして色々な可能性を感じるというのもあります。

ミタ:
まさかコンシューマーで出せるとは思っていなかったので、僕らもお話を頂けて  「ぜひとも!」という感じでした。

ゲームキャスト:
意地悪な言い方ですが、ずっと完全新作が出ていない状況でもありますし、盛り上がりの点で不安はありませんか?

ミタ:
実はそうでもないんですよ。
今はノベルアプリが、超水道の作品が好きな人がちゃんと集まってくれている感じで、むしろファンの声は大きいくらいです。数字は減りましたが、濃密になっていると感じます。
『ghostpia』もアップデートのたびに結構な人が読んでくれていて、みんな追っかけてくれているんだなと思うと感謝しかないです。

ゲームキャスト:
あー、確かに『ghostpia』アップデートのたびに記事を書いていますが、先日の第4章追加のリリースのときもTwitterの反応は良かったですね。
しかし、それでも無料のスマホ版アプリを、移植版のSwitchでは有料タイトルとして出すと話は違ってくるのでは?

ミタ:
むしろ、無料アプリを出していたから今こういう選択ができている感じですね。
僕たちのファンは学生がとても多かったんですけど、今ちょうど学生だった読者がみんな大人になって経済的余裕ができてきて、例えばファングッズを大人買いして応援してくれる人とか、そういった人が増えてきているんですね。
昔より、今の方がついてきてくれる人も多いんじゃないかと思います。

ゲームキャスト:
なるほど、熱量の高いファンがいて、彼らに経済的余裕ができた時期で、超水道として羽ばたけるときがきたと。
「主要ファンが学生だから、あまり無茶なマネタイズはできない」って話はたまに聞きますが、その解決方法として客層を変えたりするのではなく、7年も待ち続けた結果見えた景色……ということですか。

ミタ:
待ち続けていたわけではありませんが、新しい景色が見えるようになりました。

ゲームキャスト:
Switch版が有料タイトルとして登場すると、無料で提供されていたスマホ版はどうなるのでしょうか?
また、Switch版とスマホ版とで何か違いは出てくるのでしょうか?

ミタ:
スマホ版にも物語のアップデートは提供されます。
でも、Switch版の方が演出が強化されていたりしてより楽しめるイメージですね。

ゲームキャスト:
演出の強化というと?

ミタ:
アイデア段階ですが、HD振動を使って銃の反動が感じられたり、アニメーションの追加などを考えています。
また、音響の方でもちょっと驚くような仕組みを入れられるかも知れません。

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▲展示されていたSwitch版には、コントローラーをTVリモコンのように使ってチャンネルを切り替え、ノイズがでる演出が追加されていた。

ゲームキャスト:
アニメーションを入れるだけでなく、音も!
それだと、元のアプリを知っていても、もう1回楽しめるぐらい迫力や体験が変わってきそうですね。

ミタ:
スマホ版でも十分楽しめますが、もっと楽しみたい方や、もっと超水道の活動が見たい方にはSwitch版を購入していただければいいな、と思っています。
また、ローカライズも計画しており、このコンシューマー進出を機に、海外にも作品を問えることが本当に楽しみです。私は昔から海外アニメに親しんでいて、(『ghostpia』は)そういったエッセンスを日本のノベルゲームで昇華したものが海外でどんな評価を受けるか、全 力で挑戦していきたいと思っています。

ゲームキャスト:
いま、さらりとすごいことを言いませんでしたか?
『ghostpia』の海外版を出すとか。文字数の多いノベルゲームは、翻訳コストが高くてなかなか海外版を出しづらいと聞きますが、今回は海外版も出して行くのですか!?

ミタ:
出していきます!
iOS版の話ですが、普段、超水道宛てに「ghostpiaの自国語版が欲しい」というメールを定期的に頂くんです。BitSummit会場でも、外国人の方からの評判がすこぶるいいので、「これはいけるかもしれない」と淡い希望を抱いています。
room6さんも、「むしろ海外版も出さなければもったいない!」と言ってくれているので、挑戦していきます!

ゲームキャスト:
なるほど、それでSwitch版の変更点に気合いが入っていた理由が納得できた気がします。
超水道で初の海外展開作品として、世界で戦えるレベルの演出クオリティまで持っていく気持ちが入っていたのですね。

ミタ:
自分は海外アニメに憧れがあるので、そこはがぜん気合いが入ります!
中学の仲良しグループから始まった超水道が、こうして大人になってから、しかも普通のサラリーマンをしながら世界に作品を送り出せるチャンスを頂けている。
世の中捨てたもんじゃないな、と思っております。 みんなで力を合わせて頑張りますので、どうかご期待ください!

ゲームキャスト:
ありがとうございます。
いろいろ疑問が解消されたし、今後の展開が楽しみになる内容でした。海外版の進行や反響の話も今後ぜひ聞かせてください!

以上。

『ghostpia』のSwitch版発表を聞いたとき、最初は「今なのか!?」と驚いたのだが、話を聞いてみると納得。
App Store初期からずっとアプリを提供し続けていた超水道だからこそ移植担当が見つかり、ファンが成熟している追い風があるなかで、勢いに乗った海外進出になるようだ。
実際、ビジュアルノベル系のジャンルが世界で勢いを増している流れがあり、ゲームキャストとしてもジャンルに可能性を感じている。

出展されたSwitch版もきっちり動いており、ファンのため、新規に体験するプレイヤーのための高品質タイトルになることが予感された。
発売予定に関してはまだ明かされていないが、情報が出次第、またお知らせしたい。

アプリリンク:
ghostpia (itunes 無料)