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ところにょり新境地。より悲しい世界と、より切ない物語の『おわかれのほし』レポート #BitSummit

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『ひとりぼっち惑星』で名をあげたところにょりさんの新作、『おわかれのほし』をBitSummit Vol.6で遊んできたのだが……いつもの切ない味はそのままに、このゲームは既存作品とはっきり異なるゲームに仕上がろうとしていた。
今回は、“新しいところにょり”とでも言うべきこの作品をレポートする。

ゲームの舞台は、水没しつつあるロボットの村。ただし、村人はほぼ全て死に絶え、その遺体があちこちに転がり、建物は朽ちていく終末の世界だ。
プレイヤーは(電脳のようなものを移し替えて)他の住人の遺体に乗り移ることができる。この能力を使って遺体を弔うゲームが『おわかれのほし』だ。
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遺体に乗り移ると、プレイヤーは主人公はその住人の記憶を知ることができる。
ただし、住人の記憶は断片的にしか読み取れず、ただ乗り移っただけで過去に村で起きたことや、住人の心情を知ることはできない。
全ての住人には「あした したかった こと」があり、プレイヤーは住人に代わって「あした したかった こと」を実行し、心残りを解消する必要があるのだ。
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そうして「あした やりたかった こと」を行う過程で住人の心情や背景を知っていき、心残りを解消した段階で住人の身に起こったことがすべてわかる。
そして「あした やりたかった こと」がなくなった住人は、過去に死んだ村人が眠る墓地……水底に沈み、プレイヤーと別れを告げる。
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『おわかれのほし』は、こうして住人たちの最後の瞬間を知り、人生の意味や人を弔う意味を考えるゲームになっている。
これだけを書くとゲームの空気や切ない物語がいつもの“ところにょり味”なのだが、プレイしてみるとその制作アプローチはいつものゲームとはかなり異なる。
これまでのゲームシステムは何かしら奇をてらったものだったりしたが、今回は横スクロールのポイントクリック型アドベンチャーとなっており、村を探索することに重点を置いている。

また、これまでも独特のビジュアルが印象的であったが、今作のビジュアルは今まで以上に心に引っかかる。
何故なのかと観察してみると、これまでは図形の組み合わせであったデザインが、1つ1つドットで描かれたパーツの集合体に変更されていた。
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今作はPCで出すことも念頭に置き、過去作よりもディティールをかなり上げてあるという。事実、この工夫が世界観を補強しており、過去作以上に終末感が漂う世界を作り上げている。
意識しないでも楽しめるのだが、『おわかれのほし』を見る機会があれば、ぜひ画面を拡大してみてみて欲しい。

その上で、今作は「話のボリュームを増やしたい」という意向で、すでに基本システムができている中で今後半年かけてたくさんの遺体……つまり、ストーリーを用意していくという。
より美しく悲しくなった世界、死を避けられない膨大な物語。
『おわかれのほし』は、ところにょりさんのファンが待ち望む、過去最大の大作になりそうだ。

関連リンク:
ところにょりさん公式Twitter