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知らない街の夜を散歩するようなゲーム『UNREAL LIFE』で、ドット絵の良さをもっと伝えたい。ゲーム開発者“hako 生活” | 選りすぐりBitSummit

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少し前に『UNREAL LIFE』というゲームの体験版を触らせてもらったとき、その完成度に非常に驚いた。
ゲームキャストではゲームの世界観が秀逸な“雰囲気ゲー”を高く評価する傾向があるが、体験版の中で物語の驚きも用意されており、アートの印象だけで終わらないエンターテイメントになっていたからだ。BitSummit Vol.6では、『UNREAL LIFE』をプレイすべきだと思う。

ということで、2018に出展する開発者の中から、注目の作品と人を選んで紹介する「選りすぐりBitSummit」第2回は、『UNREAL LIFE』と hako 生活さんを紹介する。

hako 生活
HakoLogo
2015年にパズルゲーム『Color Finder』をリリースし、現在は『UNREAL LIFE』制作中。
Pixel Art Parkというドット絵イベントの実行委員会にも所属する。

nama
本日はよろしくお願いします。

hako:
“hako 生活”と言います。
ゲームとしては『Color Finder』というドット絵のパズルゲームを2015年に出しています。もともと、システムエンジニアをしながらゲームを作っていたんですが、2018年1月に会社を辞めて2月から個人で制作しています。
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▲『Color Finder』。パズルとして楽しめるだけでなく、メッセージも含めた世界観も良かった。

nama
『Color Finder』は丁寧な作りで根強いファンがいる印象ですが、会社勤めしながら作っていたんですね。

hako:
実は『Color Finder』、学生のときに作ってました。Javaでゲーム作って友人に遊んでいてもらっていて、その派生でAndroidに出しましたんです。
出した理由は、自分の実力がどれだけ市場に通じるのか試したかったからです。

nama
手ごたえはいかがでしたか?

hako:
最初は全然インストール数もなくて宣伝も初めてで大変でしたが、(レビュー平均評価は)4.5を超えて、現在7万ぐらいはインストールされています。
だから「ある程度、通用するんだな」と思いました。小さいものを作ったけど、市場に出しても悪くないと。

nama
その手応えがあったからこそ、会社を辞めてインディーゲーム開発専業になったわけですか。

hako:
そこも少しありますが、ゲームを作っているうちに(他の開発者との)交流が増えて、自分の人生の選択肢が広がって見えるようになって、今のゲームを完成させるのが第一目標になってしまって。
自分の作っているものを完成させるには、今の会社にいたらできないだろうな、と。
ドット絵をもっと広めたいんです。

nama
少し前から始まった日本のインディゲームブームが、hakoさん独立のきっかけになったんですね。そういう意味では、BitSummitってその原点かもしれませんね。
ところでドット絵は、もう十分に市民権を得ているのでは…?

hako:
僕が小さい頃によく遊んできたゲームは、 ほとんどがドット絵でした。
多くのゲームが3D化している時代に、僕がドット絵に魅力に感じ続けているのは当時の思い出補正とかではなく、単純にドット絵という表現手法に魅力があるからだと思っています。
ドット絵はもっと可能性があって、多く広がると思っていて、まだ魅力を知らない人にも届けたい。
だから、そこの可能性をもっと見つけたいし、自分からもどんどん発信していきたい。

nama
その発進する“可能性”の1つが『UNREAL LIFE』なんですね。

hako:
『Color Finder』はなるべく小さいものでクオリティを一定量出すことにこだわったんですけど、小さくせず、自分の限界まで作ったらどうなるんだろうと思って、ある楽曲からインスピレーションを得て、物語を妄想して作り始めました。
あ、最新の体験版あるんですけど、やります?(起動しながら)

nama
もちろん!
これが……最初に起きる場所……なんというか、青くて、人がいなくて、全体に寂しくて不思議な街ですね。
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hako:
コンセプトとしては冒険している感を大事にしていて、知らない街に行って、夜を散歩しているような。そういう感覚を大事にしています。

nama
あー!わかります!
hakoさんのTwitterを見ていても、高揚感のある夜というか、子供のころにすっごく夜更かしして外に出たときの冒険感というか……アートにそういうのが感じられますよね。夜とか、さみしい物に思い入れが? ▲Twitterより。『UNREAL LIFE』のものではないが、夜の世界を描くことが多い。


hako:
街は、自転車や、植木鉢、脚立とか 人の生活によって配置されたモノで構成されていると思いますが、夜になると肝心の人がほとんどいないんですよね。 だからこそ夜道の散歩は街自身の存在感をすごく感じます。なんでこんなところにこんな物が落ちているんだろう?とか。
想像するのが楽しいです。だからそれをモチーフにしました。

nama
あー、カットシーンまできっちりドット絵で作られている!
キャラのアニメーションもドット絵で1コマずつ描かれていて、いいですね。これが、hakoさんの好きなドット絵の魅力を発信するってことか……!
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あ、すいませんビジュアルばかりみていて聞いていなかったんですが、ゲームとしてはどんなゲームになるんでしょうか?

hako:
記憶喪失の少女が、自分の記憶を取り戻していく物語ですね。
少女には周りの物を触って、触った物の記憶を読み取る能力があります。それを使って、触った物の過去と現在の違いをヒントに謎を解き、自分が置かれている世界の秘密みたいなものを、冒険しながら探っていくと。

nama
物を触ると出てきますね。これが記憶か。
OLDが過去の記憶で、NEWが現在の状態ですね。
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hako:
それを比較して謎を解くパズルも用意しています。
もともと『Color Finder』みたいなパズルを作るのが好きなので、そこもこだわって楽しめるように作っています。

nama
なるほど。あ、まずい、ちょっと演出的に物語のスクショ……を見せるとネタバレになりますね。
なので言葉で聞いてしまいますが、物語は内容になっていくのでしょうか。

hako:
ダークファンタジー……というか、キャラクターとか、基本ラインは可愛いんだけど、断片的に重いというか、そういう感じですね。
話自体が結構、重いんで。そういうのが好きな方に楽しんで欲しいな、と。
僕自身が『IB』とか、『Undertale』に影響を受けていて。
キャラクターが記憶喪失の女の子と、それをサポートする無線式の信号機っていう、しゃべる信号機なんですけど。
そのキャラクターとか、ちょっと変な性格だったりとか、そういうのを見て欲しいです。

-------10分後------

nama
ああ、すごかった。ネタバレになるから言えないけど、煮詰まってない点は見えても、体験版からあふれる可能性が見えている!
アートも印象的だし、エフェクトもカッコいいし、何より物語が心に引っかかって続きがやりたくなる。体験版としては、本当に素晴らしい。

hako:
褒めすぎじゃないですか(笑)

nama
いやいや、これは記事にして紹介すべき完成度ですよ!(※この話の中で記事化が決定した)これで完成度はどれぐらいなんですか?

hako:
今は60%ぐらいできていますね。会社辞める前は20%ぐらいだったので、この3カ月で一気に進みました。リリース目標は2018年9月です。

nama
思ったより早い。

hako:
そうしないと生きていけないかもしれないのもあるので(笑)
そんなわけで、ビットサミットが完成前最後の出展になると思います。楽しめるものになっていると思うので、ぜひ皆さん見に来てください。

以上。

アドベンチャーというジャンルは少しのプレイでは面白さを見いだしづらいのだが、『UNREAL LIFE』は体験版の時点で魅力が伝わるようになっており、プレイする価値のある体験版と感じた。
ただ、1プレイで約15分かかるため、BitSummit Vol.6のような展示イベントでは回転率が悪く、プレイが困難になる可能性もある。
今回が最後の出展になるのこともあるし、ぜひイベントで体験してみて欲しい。

hako 生活さんの『UNREAL LIFE』は、BitSummit Vol.6のr-17ブースで体験できる。

関連リンク:
https://twitter.com/clrfnd

アプリリンク: 
ColorFinder : 色を操るパズル (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

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