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日本で振るわなかったゲームが中国でヒット。その理由は“ストアレビューが機能していたから”。続『勇者が魔王に聖剣隠された』作者インタビュー

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以前、アマチュア漫画から転身して日本でアプリを出し、中国でヒットを飛ばした猫丘さんのインタビュー風記事を書いた。
日本で1万DLのゲームを中国で出したら、60万DLのヒット作になったゲーム舞台裏

しかし、中国と日本の人口差は10倍程度(2016年のデータ)。となると、これだけヒットした理由は単なる人口差ではないが、当時は中国でヒットした理由を聞けなかったので「新作が中国で出たらヒットした理由などを聞こう」という約束のもと、改めて猫丘さんにお話をうかがってみた。
中国でヒットした理由はなんだったのだろうか。

nama
2回目なので自己紹介も深掘りしていきますか。
猫丘さんは元アマチュア漫画家とおっしゃっていましたが、確か集英社の『ジャンプ+』の連載権を獲得するトーナメントで読者投票1位を獲っていましたよね?

猫丘:
あ、はい。
でもアレはそこまで行くと思っていなくて、「どうせ力試しだし、3話で完結させてしまえ」と出したら、まさかの結果で驚きました。
たぶん、類似の連載獲得形式の漫画賞の結果を分析してタイトルとサムネイルのインパクトを考えて出したのが功を奏したのだと思います。

nama
なるほど。
新人の読者投票系イベントははインパクトが重要と聞いたことがありますが、最初からそこに焦点を当てていたんですね。

猫丘:
あと、お色気系のギャグだったんですよ。
それで2位以下の方の10倍も見てもらえたんです。
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▲参考までに、最新作『伝説の勇者の究極の選択』より。全体的にぱっつんぱっつん。

nama
エロ強い……。

猫丘:
あ、でも10倍のビューがあっても得票は2位の方と僅差でした。
つまり、見られても投票されない=読者満足度としては低いんですけどね(笑)。
1位で1回戦を通りましたが、連載を前提としていない作りだったので当たり前のように2次で落とされています。

nama
その後、今度は優勝=即連載の“裏サンデートーナメント”(現マンガワン連載トーナメント)に出て連載獲得寸前までいっていましたよね?
担当編集がつく順位に入っていましたし、素人目には漫画家を諦める必要はないように感じるのですが……そこからゲームに移動した理由はなんだったのでしょうか?

猫丘:
“第1回マンガワン連載トーナメント”では、エロゲーの主人公を健全に描いてみたギャグ漫画『おっぱいファンタジー』で本気で連載を獲りに行って読者投票で4位まで行きましたが、漫画を諦めた理由は自分の画力です。
あのあとで担当の編集者さんと連載に向けて話はあったんですが、編集長さんから「君が一番画力低いから頑張ってね」と冗談めかして発破をかけられまして。

nama
編集長さんから!ちょっと必死になる案件ですね。

猫丘:
それで必死に練習したんですが、あまり画力上がらない。
漫画家になるのは子供の頃からの夢だったのですが、そこで漫画家を諦める……というより、少し視野を広げて自分ができることを考えてみた結果、ゲームも挑戦してみようと。
あ、もともと画力については自覚がありましたし、編集さんは良い方でしたし、編集長さんも恨んでません。ここは書いてください(笑)

nama
はい(笑)
そうして、ゲーム作りを志したんですね。プログラミングなどはどうされたのですか?

猫丘:
できませんでした。
そこで、PCのフリーゲームを作るコミュニティの“ふりーむ!”ってところの掲示板にたどり着きまして、そこで最初プランナー募集している人がいたんで応募しました
そこで話したときに「一応、イラストもかけるんですよ」と話したら「やろう」、となって。
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ふりーむ!。フリーゲームサイトであり、偉大なるフリーゲーム作者の出会いを生む場。

nama
日本の同人PCゲーム開発の王道パターンですね。

猫丘:
それで当時“なんとかあるあるガチャ”というジャンルが流行っていたので、小学生のあるあるをギャグっぽく1ページにしたものを出していこうと作ったのが『小学生あるあるマンガガチャ』です。
かなり気合を入れて描きました。
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▲こんな給食のお姉さんいたら、登校が毎日楽しみなんですけど。

nama
初めてであのクオリティですか。当時は結構Twitterで流れてくることもありましたね。

猫丘:
ところが、僕がAmazonに出していた小説や漫画本と同じぐらいの微妙な収益で割に合いませんでした。

nama
すいません、最初のアプリからまともなものを作っていていることもすごいし、Amazonで本を出して万単位はDLされたアプリより収益上げてるとか、私には驚くポイントしかないです。

猫丘:
収益効率で言うと、漫画よりマシぐらいですね。
Kindle Unlitedで出して1ページ読まれると0.5円ぐらいもらえるんですが、漫画は1ページ描くのにすごい時間かかるのに、小説は1日10ページぐらいかけるので小説が一番儲かっていて複雑な気持ちなんですが……。

nama
しかし、結果的にその収益効率が低いアプリに行くわけですよね?

猫丘:
そうですね。アプリは反響があったんです。
言っては悪いですが、Kindleの書籍はお色気の表紙で釣っている部分があって、小説は読者満足度が低くてレビューが悪い。漫画はそこそこ楽しんでもらえたみたいだけど、収益にならなかった。
そして、そのどちらも反響は少なかったんですね。
アプリは漫画並みの収益効率でしたが、反響は大きくて。  いつも「人に楽しんでもらいたい」と思ってモノを作っているので、嬉しかったんです。
だから、収益を考えないで作るようになっていて、それでも最終的に『やってそうなやつがやっている』でアプリはいったんやめていました。
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▲反響が嬉しかったという『小学生あるある』のレビュー欄。よほど嬉しかったのか、ほとんどのレビューに返信されている。

nama
そこまでが前回、中国に出すまで収益は諦めていた……と聞いたあたりですね。

猫丘:
創って楽しんでもらうことは好きですが、創作で食べていくのを諦めるか悩んでいた感じですね。
この時期は株の収益でギリギリ生活して、創作は発表せずに続けていました。

nama
前振りが膨大になってしまってしまいましたが、そこから中国進出が始まると。
中国でウケた理由とか、知りたいです!

猫丘:
はい。そこからは予想外のことが次々起きて楽しい時期でした。
まず、pujia8スタジオさんが中国語翻訳とパブリッシュをやってくれると聞いて、まずはお願いしてみました。
すると、私のゲームは高く評価されて「やりましょう」となったんです。
自分で言うのもなんですが、私のゲームはぱっと見で面白く見えないので、高評価になると思っていませんでした。

nama
失礼ながら、分かります。

猫丘:
中国にはたくさんのアプリストアがあるのですが、その中でもTapTapでは最初にプレイした人がどんどん広めてくれて、すぐにストア内でスタッフがフィーチャーしてくれて、最高のときで1日10万ダウンロードされました。
おそらく、TAPTAPプラットフォーム内でカジュアルゲームが刺さるプレイヤーにほぼリーチしたと思います。
pujia8さんも60万行くとは思っていなかったようで、驚かれました。

nama
そこまで受け入れられた理由は、どこにあったのでしょうか?(やっと本題に入った!)

猫丘:
第一にpujia8さんの翻訳の品質の高さですね。
もともと、pujia8さんは海外のゲームを中国語に翻訳して勝手に配信する集団でした(※現在は合法な仕事のみに業態を変えている)が、その中でもpujia8さんは日本の大手ゲームの翻訳案件に仕事として関わるほど質が高く、中国内でファンがついているほどなんですね。
翻訳したときに、意味がちゃんと伝わるようにしっかり修正してくれるので、僕みたいにシナリオにアラの多いゲームを作ってる場合、日本版より中国語版の方が完成度高いんじゃないかなと思っています。

nama
第2は?

猫丘:
第2に、中国内ではこういったカジュアルゲームが日本より少なく、競争が楽なことです。
本来、中国でゲームを配信しようとすると版号とストアへの配信手数料がかかります。
版号取得には手続きが面倒で、3ヶ月~6ヶ月ぐらい時間もかかるのでコストを考えると30万ぐらい(版号取得に1万だが、法務的な処理の人件費を含めて30万とのこと)はかかってしまう。
その版号を取得しても大手ストアだと配信手数料で更に55%ぐらいもっていかれるので、そこそこヒットしないと版号取得のコストで赤字になるからめちゃくちゃハードルが高い。
だから、カジュアルゲームでも『キャンディクラッシュ』のような課金型ゲームばかりで、日本のように課金要素が薄いカジュアルゲームを出すパブリッシャーというのは成り立ちにくい環境があります。

nama
あー、1作出すたびに30万支払うというのはすごくハードル高いですね……。

猫丘:
実際は現地法人も必要なので、代理店を通すと合計70%はとられますね。
しかも、版号を正式に取得して出したとしても、中国の大手ストアのランキングでは広告をがんがんうってる有名なソーシャルゲームがたくさんあるので、それを押しのけて個人開発のアプリがランキング上位になるのはかなり難しく、ダウンロードもされないそうです。
日本的なカジュアルゲームを出すメリットがない。
そういった環境があるので、結果として中国国内ではカジュアルゲームが少ない。
ただ、出されているのは少なくても、需要自体はあるというのが面白いところです。なので、僕のアプリがダウンロードされたのは隙間産業的な側面もあるのかなと思っています。

nama
ふむふむ。

猫丘:
最後にTAPTAPというプラットフォームの存在。
TAPTAPは他の大手ストアのように配信手数料を取らないんです。
さらに、そういったソーシャルゲームだけなく、小規模なカジュアルゲームにも光があたるようにストア側で積極的にフューチャーしてくれるので、カジュアルゲームでも大手ストアと違ってDLされやすい。
しかもサイトとして「面白いゲームを見つけて、みんなでオススメしあおう」という方針で運営しているので、そこに集まったユーザーも面白いゲームを見つけたら評価してレビューする(システム的にもレビューしないと評価できない)といった流れができてて、プレイしたユーザー同士が口コミでプロモーションしてくれる凄くありがたいプラットフォームなんですよね。

nama
日本のプレイヤーとの差は感じましたか?

猫丘:
日本と言うより、プラットフォームの差は感じました。
他のストアでは僕のアプリはランキングとかに載らないですが、ゲームが面白かったらキャッチーでなくともTAPTAPでは載れるんですよ。
Google Playでも、App Storeでも拾ってもらえないですが、ここでは評価してもらえる。
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▲TAPTAPのランキング。猫丘さんの新作が2位に。

あとは、日本のアプリストアでは理不尽に★1とか、面白いけど○○があるから★4とかあって、減点法で評価してるな、と。
一方でTAPTAPは「広告が多いけど★5」とか「ゲーム内容は良いので★5」と、面白さとマイナス点を分けて考えているユーザーが集まっていると感じました。
もちろん、悪いことは長文できっちり指摘されて傷ついたりもしますけど、それも参考になります。
あとは運営側が悪質なコメントを削除しているようで、プラットフォームの姿勢もあると思います。
中国と日本というよりも、TAPTAPという「面白いものをユーザーが見つけてすすめる」プラットフォームと日本の差ですかね。
中国でも他のストアではTAPTAPより少し荒れていますね。

nama
つまり、信頼できるレビューが集まるサイトがあって、それを見てダウンロードするコアなゲーマーが集まっているんですね。
前回「中国のプレイヤーの方が応援課金してくれる」という話がありましたがTAPTAPというプラットフォームの性質で応援されやすく、大手ストアではそうではない状況になっていそうですね。

猫丘:
そうですね。
中国でもTAPTAP経由でアプリをダウンロードした方々は応援課金率が3%近い。
それ以外では1%未満で、数字にも出ていると思います。

nama
日本にもそういうところが欲しい…!
で、中国を意識して出した『究極の勇者の選択』の状況はどうでしょうか?

猫丘:
はい、これは中国で出すことを意識して作って単純にゲーム内のイラストに文字とか使わないようにして翻訳しやすくしたこと、話に中国の故事をネタにしたものを入れたりしています。
レビュー評価はまあまあ良いほうでしたが、ダウンロード数はiOSは1日分ちょいで2,700ぐらい。Androidが1ヶ月で3.5万です。  数字としては低くなっていますが、今回はTAPTAPがアプリストア機能を停止している時期に出してしまった仕方ないかなと思います。

nama
そうすると、TAPTAPが復活するまで中国にうまみはないと言うことになりませんか?

猫丘:
いえ、中国のiOSに出すだけで価値があります。
中国のiOS版の収益は良い時期で1DLあたり8円で、日本と同じぐらい稼ぐこともありました。
向こうのiPhoneは高級品なので、使っているユーザーがお金を払えるユーザーで、広告をクリックしたときの価値も高いと言うことなのだと思います。

nama
つまり、猫岡さんが『魔王に聖剣隠された』で感じた、アプリで食べていける手応えは今も残っていると。

猫丘:
実は『魔王に聖剣隠された』も、Android版がiOS版の10倍以上ダウンロードされているのですが、iOSの収益の方が大きいんです。それだけでも中国で出す価値はあります。
中国ではAndroidは誰でも持てちゃうので、ユーザーの広告価値が低いのでしょう。

nama
ありがとうございました。
こう、中国に出した結果からいろいろ分析するはずが、TAPTAPのアプリDL機能停止と被った影響で少なめでしたが、いろいろ知らない話が多くて楽しかったです。
ところで猫丘さん自身は、今後はどうされる予定ですか?

猫丘:
まだ言えない展開があるのですが……とりあえず、3ヶ月に1本のペースでアプリを作りたいと思っています。
ゲームが上手くヒットしたら、絵師の方と組んでゲームを出したりもしたいですね。
今は僕の絵柄とあっているストーリーを採用しているので、真面目系のネタは寝かしているんですよ。

nama
イラストもシナリオもやってそのペースは、だいぶ多作ですね。
ご自身のイラストを分析して出し方を考えている猫丘さんが、その計算を持って出す真面目系ゲームというのも気になります。
では、次回は言えない展開が面白い時期を迎えたら、飯でも食べましょう!

猫丘:
そのときは、話せることをできる限り話しますので、皆さん、『魔王の倒し方』をまずはよろしくお願いします!
儲かったら、ゲーキャスさんと会うときに焼き肉でもおごろうと思います(笑)


以上。
主要プラットフォームであったTAPTAPの営業状態の関係で、予想していた内容と異なる「これまで売れた理由」の話になってしまったが、興味深い内容があったなら幸いだ。
個人的には、ゲーマーのためのレビュープラットフォームが上手く機能している点に関しては中国がうらやましいと感じてしまった。
おそらく(かなり先だが)次回もあるので、もし良ければ感想や次に聞いて見たいことなど、コメントで書いて欲しい。

なお、ゲーキャスが猫丘さんのアプリで一番好きなのは『魔王に聖剣隠された』なので、合わせてどうぞ。

アプリリンク:
魔王の倒し方 (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
小学生あるあるマンガガチャ (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

 コメント一覧 (3)

    • 1. ななし
    • 2018年04月17日 14:00
    • 中国ってアプリ出すだけで数十万かかるのか。知らなかった
    • 2.  
    • 2018年04月18日 06:35
    • 以前Twitchで開発風景を配信していた個人開発者さんが、「カネがかかりすぎるから個人で中国で配信するのは無理」っていってたんだけど、こういう事情だったんですね。
    • 3.
    • 2018年04月18日 10:23
    • 凄く面白い記事でした。
      日本で、埋もれがちなゲームやアプリに光を当てるにはどうしたらいいんでしょうね…
      『魔王に聖剣隠された』さくっと遊べて面白かったです。

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