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日本で1万DLのゲームを中国で出したら、60万DLのヒット作に。同人ゲーム『勇者が魔王に聖剣隠された』の舞台裏

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中国国内で『たびかえる』が大ヒットしたことは有名だが、その影で多くの日本のスマホゲームが着々と輸出され、日本国内を超えるダウンロードを記録している。
今回紹介する猫丘さんの『勇者が魔王に聖剣隠された』もまさにその典型例で、日本で1万DLのゲームが、中国に出した途端に60万DLを記録し、アプリ制作で生きていく道が見えたのだという。
なぜ、そこまでダウンロードされたのか、どうやって中国で出したのか。
聞きたい。聞きたすぎる……と思ったら、聞く前に作者さんが全て書いて送ってくれたのでここで紹介する。

ことの始まりは、ゲームキャストに届いた1通のメールから。
『究極の選択の勇者の伝説』ってゲームを出したので紹介してください!
ほー。勇者が究極の選択を繰り返して魔王を倒すファンタジーRPG脱出ゲームか……しかも自分でイラスト書いているのか気合入っていて面白そう……。
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▲登場人物が何故かみんな肉感的。

うーん、面白いけど好みではないかな……ということで。
お前のゲーム、レビューしたいと思わなかったから紹介しないぜ。
でも、ついでにやった昔の作品『勇者が魔王に聖剣隠された』と『やってそうな奴がやってる』はかなり好きだったんだからね!
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やってそうな奴がやってる』。犯行現場に怪しいやつがいて、だいたいそいつが犯人という推理の必要ない新基軸ゲー

と失礼なメールを返したところ、
本当ですか!『勇者が魔王に聖剣隠された』日本で1万DLだけど、中国に出したら60万DLいってまして……(以下略)。
と、超長いメールで聞く前に『勇者が魔王に聖剣隠された』の中国語版リリースの舞台裏などを全部送ってくれたので、対談風に書き直して皆さんにお伝えする。
※あくまで対談風であり、実際はメールの内容を短くまとめたものです。

nama
まず、猫丘さんのプロフィールをお聞かせください。

猫丘:
初めまして。二トプというサークルでゲームを作っております猫丘と申します。元々はアマのWEB漫画家でしたが、2年ぐらい前からゲームを作っております。
漫画を描いてたころからそうでしたが、基本的にはたくさんの人を楽しませたいという思いで創作活動に励んでいます。

nama
なるほど。
私が一番好きなのは『勇者が魔王に聖剣隠された』なのですが、小ネタが挟まれたり、笑えるポイントがあったりで結構ツボにきたゲームでした。

猫丘:
ありがとうございます。プレイしてくれた方には笑ってもらいたいって気持ちがあるので、そういった小ネタとかは意識していれるようにしてます。
作ってる感覚としてはギャグ漫画書いてるみたいな感じですね。
その『勇者が魔王に聖剣隠された』ですが、日本ではGoogle Playで配信して2年ぐらいで1万ダウンロードで、今のところ僕が出したアプリでは1番ダウンロードされています。

nama
早速来ましたね。iOS版はどうでしたか?
また、何かプロモーションなどはされたのでしょうか?

猫丘:
iOSは2,000DLぐらいで今でもあまり増えてないです。
Androidでは“おすすめ”にとりあげていただいて、ダウンロードが少しずつ伸びました。
プロモーションでは、アプリのレビューサイトなどにリリースを送ったりしてました。
わりと早い段階でとりあげていただけたのはアプリゲット様で、同じぐらいの時期に一時ランキングの下位の方にのってて、そのときにけっこう集中してダウンロードが増えてましたね。大体1日100~200ぐらいはありました。
あまり僕のアプリは収益性が高くないので、お金をかけたプロモーションなどはできなかったのでとてもありがたかったです。紹介していただいたレビューサイト様にはとても感謝しています。

nama
アプリゲットさんは早いですよね……数少ない新作を紹介することで戦っているサイトなので、効果も高いと思います。
しかし、日本で伸び悩んで中国に出すわけですよね?

猫丘:
はい。その後、中国語に翻訳を無料でしてもらえるpujia8スタジオという所を知って。
そこで翻訳してもらいました。

nama
完全に無料なんですか!?
なぜ、無料で翻訳してもらえるのでしょうか?

猫丘:
大きく2つあって、個人開発者儲からないからちょっとでも手助けをしたいということ。
元々pujia8スタジオさんはゲーム好きのオタクの集まりなので、日本のゲーム開発者の内情もある程度知っていて、日本の個人開発者がほとんどが儲かっていないのでそこを自分たちが中国語に翻訳して、配信して利益を開発者の方に渡すことで金銭的な手助けになればというのが1つめ。

もう一つはこれはpujia8スタジオさんのメリットになるのですが、合法的な翻訳案件を引き受ける実績を作ることで、有料の翻訳案件へのつなげていきたいというのが2つめだったらしいです。
そういったことで去年まで完全に無償で翻訳してもらっていました。今は無償ではありません。

nama
なるほど。とすると、pujia8スタジオさんは、まっとうな翻訳会社なんですね。

猫丘:
実は、pujia8スタジオさんは元々非合法で日本のゲームアプリなどを勝手に翻訳し、広告を書き換え(※広告の収益が作者ではなく書き換えた者に入るようにする)て配信しているという所でした。
そこが2年ぐらい前から、会社化して、ゲームの翻訳会社として生まれ変わったという感じです。
もちろん、現在は広告書き換えなどは行っておらず、個人開発かつソーシャル要素・課金要素のないゲームを無料で翻訳を行っている感じです。
自分のアプリ以外でそこで翻訳してもらってる有名どころとして『七年後で待ってる』、『嘘つきゲーム』などがあります。

nama
中国はどんどん正規品の価値が高まっていますね……。
昔は大手メーカーも違法に日本のキャラクターを使ってゲームを作っていましたが、今では正規の版権を手に入れてゲームを配信するところが出てきて。
そういった流れの一部なんでしょうか。

猫丘:
そうですね。そういった流れの中の派生というのでしょうか。
中国では大手が正規の版権を手に入れ配信する流れになっていて、大手会社は大体オンラインの大型ゲームの版権を購入しています。そういうゲームの方が儲かるからです。
一方で個人開発の独立系ゲームは知名度が低いし、大ヒットでもしないと儲かりませんので、大手会社が取り上げるようなことはほとんどないそうです。
pujia8スタジオさんはクォリティーが高い独立系ゲームが好きで、中国のユーザーにも歓迎されると思い、ローカライズしないのはもったいないと感じていたそうです。そこでそういう独立系ゲームのローカライズをはじめようと思い、いろいろな日本の個人開発者の方に直接メールでお願いしていたそうです。僕はそのメールが来て、お願いすることになった人がブログで記事にしているのを見て自分からお願いしました。

nama
で、どうでした?

猫丘:
ほんとだったら儲けものぐらいの軽い気持ちでしたが、まさかそのおかげでゲームで食っていけるようになる道が切り開けるとは思ってもみませんでした。
ちなみに、僕自身は完全に無料で翻訳をしてもらったのは3本ほどで、「究極の選択」からはレベニューシェアで利益から配分という形で契約しています。

切り替わった理由ですが、pujia8スタジオさんの方では最初は文章を翻訳して配信するだけを考えていたので、無償でもやれていたそうです。しかし、中国向けの広告ネットワークや課金SDKを組み込んだりしないと、最初の僕みたいにダウンロードされても収益がないと気づいて、収益化もサポートするようになったんです。
しかし、そういった対応はストアの審査を通すためにゲーム自体に手を加えたり、多くの手間を必要とするので収益を分け合う形で翻訳と配信を行っているそうです。

nama
中国の配信は、現地の企業がないとできないと聞きましたが、どのように配信したのでしょうか。
配信もpujia8スタジオさんがやってくれるのでしょうか?

猫丘:
配信作業は全て代理でpujia8スタジオさんがやってくれます。
ただ、pujia8さんが配信してくれるのは版号という中国でゲームを配信する際に必要な許可証がいらないサイトです。この版号は取得するのにけっこうな手間と金銭的なコストがかかり、結構なヒットゲームじゃないと取得の手間とコストで赤字になってしまうので、それが必要ではないサイトのみに配信してもらっています。

nama
日本に対して違法ではなくなったと思ったら、中国では違法な話が出てきましたね(笑)

猫丘:
はい。その中でも中国のTAPTAPというレビュー主体型で海外のゲームをメインで配信してるサイト(現在は営業停止処分中)は版号がいらない配信サイトの中ではけっこう賑わっているところでなのですが、そこで『勇者が魔王に聖剣隠された』はストアで瞬間的に1位をとって、そのときの1日のダウンロード数が10万ぐらいだったと思います。

nama
正規ではない小規模ストアで1日10万……!

猫丘:
本当にすごい数ですよね。日本が1万ちょいぐらいのダウンロードだったアプリが、中国で現在までに大体60万(TAPTAPで55万・その他の細かいストアで5万ぐらい)ぐらいダウンロードされていて、正直、同じゲームが中国だとここまでダウンロードが違うのかと驚きました。

nama
でも、営業停止になったのですよね?

猫丘:
TAPTAPは元々海外ゲームのダウンロードを提供することをメインにしていたそうで、しかも他のストアのように配信手続料を取らないので、多くの独立系開発者やユーザーを引き付けていたそうです。中国の大手ストアではAppStoreやGooglePlayよりけっこう高い手数料やプラットフォーム費が必要なのでそれが版号を申請し配信をする大手プラットフォームの妨げにもなっていて、DAUが1,000万ほどに達したところを政府に睨まれる形になってしまいました。
ほかの大手プラットフォームが邪魔だと思い通報した可能性もあるそうです。

nama
まあ、中国では非公式な小規模ストアから人気ゲームを買い取って開発させる商売を大手がやっていたりしますし、エコシステムの一部だと思っておきましょう……きっと、第2第3のTAPTAPが……。
あ、中国だと1DL当たりの単価は日本と変わりますか?

猫丘:
僕の場合ゲームが50万ぐらいダウンロードされるまでは大手会社の広告をそのままの配信したので、DL数のわりにはすずめの涙程度です。
具体的なDL単価で言ったら日本では5~10円ぐらいだったのが、中国だと0.1円以下でした。

その後、pujia8スタジオさんの提案で中国向けの広告ネットワークに切り替えてから、1DL当たりの収益が2〜3円ぐらいになっています。
これは中国向けのアドネットワークに切り替えたのもありますが、iOSでも中国語版を配信したのが一番大きな要因です。中国だとiOSのダウンロード単価はAndroidの10倍~30倍ぐらいはあるので。

また、中国Androidは広告収益は悪いものの、課金収益はかなりいい数字が出ています。
現在『究極の選択の勇者の伝説』は15,000DLほどですが、課金したユーザーは300人以上いるそうで、すごい驚いています。
プレイするとわかるのですが、『究極の選択』ではステージクリア時などのタイミングで数回に1回、インタースティシャル広告が表示されるだけなので、正直課金する必要がないアプリです。
なのに、"広告削除+開発者支援”という体で課金をお願いしたところ、これだけ多くの方が課金してくれているというのはすごいことだと思います。
日本版では現在1,000ダウンロードぐらいで課金してくれてる人は2人なので、単純に数だけでいったら100倍以上、割合でいっても10倍以上ありますね。
ちなみに、詳しい数字は知りませんがこれは僕だけじゃなくて他の開発者の方も中国のほうが課金率に関しては高いそうです。

nama
…中国といえばコピーというイメージが有りましたが、意外ですね。
中国のプレイヤーの方が、作者を応援する気持ちは高いのか、それとも広告を嫌うのか……。
もしかしたら、日本の貧困化が反映されているのかもしれませんね。

猫丘:
日本の収益だけではゲームでやっていくのは難しいかなと思っていて、趣味で暇なときにちょっとずつ進めていたのですが、中国で結構たくさんの人にコメント付きの評価で褒めてもらってるのをみたら自信もつきましたし、何よりそこそこの収益があったので、もうすこし日本でも伸びて中国の収益もあわせれば、もしかしてゲームでやっていけるんじゃないかと思って、がっつり時間をとって開発進めて、『究極の選択の勇者の伝説』を出して、今は『魔王の倒し方』というゲームがもうすぐ完成します。

nama
中国に救われたという感じですね。
確かに絵も内容も個性があるので、埋もれなさそうには見えます。
最後に、中国に進出していない開発者さんに何か一言。

猫丘:
正直、(中国は)日本に比べてダウンロード単価も低くて、そんなにたくさん儲かるわけではないです。
「たくさんの方にプレイしてもらいたい!」っていう気持ちが強い人にはアプリの中国進出はオススメです。

nama
あ、まだあった。
本当の最後で『魔王の倒し方』について軽く紹介していただけませんか?

猫丘:
はい。
『魔王の倒し方』は、『勇者が魔王に聖剣隠された』と似たようなアドベンチャーゲームです。
ひとりぼっちの魔王様がモンスターの仲間を集めて魔王軍を設立しようとするのですが、その途中途中でいろんな勇者達が魔王を倒すためにやってきます。
アイテムを使ったり、選択肢を選んで、ピンチを切り抜けていくみたいなゲームです。クリアに1時間もかからないので興味があったら是非プレイしてみください。

nama
ありがとうございました!
中国はカジュアルゲームの新天地になりえそうですね……!

以上。
あまりに赤裸々な売上の数字まで出していただけて、参考になる(特に作者応援課金が日本より多いことには驚いた)のではないだろうか。
なお、中国でヒットした『魔王に聖剣隠された』は、下記で紹介している。
中国で受けそうなゲームのコツが、コレをプレイするとわかるかも。
漫画描きがアプリ制作に転身して作った脱出ゲーム風RPGギャグ作品『魔王に聖剣隠された』レビュー

というか、本当にインタビューして「なんで中国で受けたと思いますか?」とか聞けばよかった……。その話は、もしかしたら次回作の『魔王の倒し方』がでた頃にもっとちゃんと聞く……かも。

関連アプリリンク:
脱出ゲーム-勇者が魔王に聖剣隠された (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
究極の選択の勇者の伝説-脱出ゲーム (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)
探偵風脱出風ゲームーやってそうな奴がやってる (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

コメント一覧

    • 1. ななし
    • 2018年03月27日 14:49
    • 単純に人口で考えても10倍の需要は見込めるわけだしな
      日本的な感覚のゲームも欧米に比べれば受け入れられやすいだろうし、下手に英語化したりするよりは中国語に対応した方がいいのかもしれない
    • 2. ななし
    • 2018年03月27日 19:25
    • 多分肉感的でクセのある絵柄と、ハップさんの隠されたゲーっぽいテイストが中国人の目を引いたんじゃないかな。
      くっそ低クオリティなパクリゲーが向こうじゃ数十万DLされてるようだし、その波に乗って、かつシュールな作風が受け入れられたのかと。

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