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ガンダム好きにガンプラではなく棍棒を持たせて殴り合わせたゲーム『機動戦士ガンダム即応戦線』。その歴史を振り返る

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『機動戦士ガンダム即応戦線』(以下、ガンソク)は、身も蓋もないほど『クラッシュ・ロワイヤル』をガンダムに置き換えたリアルタイム戦術ゲームです。
今回はこのゲームについて、ブログに来たコメントを真面目に返したいと思います。
コメントの返事なので、ですます調です。

『機動戦士ガンダム即応戦線』に関してレビュー記事やその他のコメント欄に下記のようなコメントをいただきました。
なんか最近全く面白くないソシャゲだったりパクリゲー高評価してること多くないか 不安だ

匿名掲示板のガンダム即応戦線の霊圧が消えた……
ガンダムでもここまで大爆死することってあるんだと知った衝撃

ゲームキャストでレビューした即応戦線について何か一言ないでしょうか。
上記のコメントにあるように誰もやっていないようですが、まだやっているのであれば、なぜこうなったのか考察してほしいです。
特に最後のコメントは、「このゲームのレビューするなんてバカなの?なに考えているの?」を酷くしたコメントが来たので無視ししていたのですが、暴言を撤回して丁寧な言葉で再度コメントいただいたので、毎回「コメントでしっかり返事したい」と言っている立場上、真面目に返事しようと思って書いていたら長くなったので記事にした次第です。
(毎回これほど書いたら死ぬので、これが最後だと思いますが)

まず最初に「某匿名掲示板(おそらく5ch)のスレッドがなくなったから終わっている」「もう誰もやってない」「爆死している」は一概に言えません。
例えば、あの長寿ゲーム『パワプロ』ですら5chのスレッドは荒れまくって消えたことがあります。しかし、Lobiや他の場所では生き延びていて荒らしが消えた頃に復活して前以上に伸びました。もともとLobiのが盛況でしたし、あまりガンソクにあまり影響はないではないでしょうか。

また、プレイヤー数に関しても、最近15試合プレイするイベントクエストを終えたときに私の勝利ポイントのランキングがジオン内で9,000位だったことを考えると、連邦分も合わせてイベントをこなす程度のプレイヤーが2万人はいることになるかと思います。私の勝率が7割程度で一般プレイヤーよりポイントが多いことを考えれば、もっともっとプレイヤーがいるはずです。
最低でも下の上程度のソーシャルゲームの人口は持っていることになるでしょう。

「ガンダムでも爆死することがある」というコメントがありましたが、私は「ガンダムだから日本で対戦が成り立つほど人が集められている」というところに驚いています。
対人戦が機能しないゲームが多い中、まだまだすぐ対戦が始まる『ガンソク』は生きながらえていると感じています。
しかし、「貴重なユニットをほぼ配っている」イベント構造的に『クラロワ』よりも売上高が高くなりづらいので、売上げが伸びないことは確かに心配です。
仮にもガンダムブランドなのでFFが1年は続くように、1年は頑張ると思いますが。

それで、なぜなんでこのゲームをわざわざレビューしたかなのですが……。
確かに多くの場所で指摘されるとおり、『ガンソク』は身も蓋もない『クラロワ』コピー系ゲームです。
しかも『ガンソク』にはバグが多く、操作性は劣り、戦術性も『クラロワ』が優れている。だから、単に安定して面白いゲームをやりたければ『クラロワ』を遊べば良い。それは間違いありません。
『ガンソク』に評価6(ギリギリの甘めで)と出しましたが、『クラロワ』はジャンルの先駆けであることも考えれば評価8はありえるでしょう。それぐらいの差があります。

それでも、『ガンソク』は単なるクラロワのコピーに見えて、異なる部分があり、そこがたまたま好みだったわけです。
『クラロワ』は全員が同じユニットで対戦しますが、『ガンソク』はジオン陣営と連邦陣営には異なるユニットがいて、非対称の対戦が1つの魅力。
荒れる原因にもなっていますが。

また、ユニットの調整も新規ユニットアイデアも、ゲームスピードも狂気を感じる内容です。
『クラロワ』で“ゴブリンバレル”に当たる奇襲ユニットは低コスト兵器で処理できない固さ(しかもやっぱり出るのが早い)なんて攻撃力がインフレした調整が一部にほどこされています。
また、本作独自の凶悪なアイデアにも2つほど狂ったものが見つかります。
1つはウォッチタワーという建物。周囲のユニットの射程を上げるユニットなのですが、コイツがいると建物系のユニットやちょっと射程の長いユニットが敵拠点を一方的に射程外から撃てます。
クラロワで言うと、マスケット兵や大砲が橋の向こうから拠点を撃ってくるイメージです。決まると凶悪すぎる(なお、コスト3)。
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▲ウォッチタワーの効果を得て、ザクキャノン砲台が画面下から拠点を襲う。ノーダメージで防ぐのはまず無理。

もう1つは散会戦術という兵器。これは味方ユニットを指定した場所から強制的に押し出す使い切りカードですが、これによって近接ユニットを敵陣に向けて押し出して奇襲をかけられます。
味方と相性の悪い敵を引き剥がすこともできる。
使い方次第で楽しめるカードですが、どこかでバランスを大きく崩しそうな予感もします。
その他、独創的すぎてまったく役に立たないジャミングのようなカードもありますが、まあ独創性の犠牲者と言うことで。
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▲円が描かれたかと思うと(左図)、一気にグフがはじき出されて敵拠点を直撃(右図)。楽しい。

そんな凶悪なユニットが揃っていることに加え、配置速度やユニットの動きが早めで、見てからの対応がクラロワより若干難しい。
クラロワより凶悪なユニットが、クラロワより対処しづらいスピードで迫ってくる……普通はIPもののゲームを作るときは無難に作るものですが、ガンソクは野蛮人が凶器を持って殴り合っているかのような作りです。正気を感じないわけです。
クラロワが洗練されたルールの中で戦う騎士の決闘だとすれば、ガンソクはいびつで巨大な棍棒を持つ野蛮人が裸で殴り合っているようなゲームなのです。
それが好きで紹介しました。

問題があるとすれば、ガンダム好きにガンプラを持たせて模擬戦をさせるのではなく、棍棒を持たせて殴り合わせたことでしょうか。
ガンダム好きは決してゲーマー集団ではなく、ガンダムが好きな集団で、ゲーム好きが多いとしても決してスマホゲームが強い集団ではない。そんな人々にマニアックな調整のゲームを遊ばせるのは、正気の沙汰と思えないチャレンジャーだったのではないか、と。
実際、それが運営による初心者の撲滅につながったように思います。

ゲームリリース初期、まず運営はジオンの初心者を徹底的に痛めつけました。
本作ではURレアリティの強力カードであるガンダムとシャア専用ザクが全プレイヤーに配られたのですが、ゲームリリース時はシャア専用ザクの対処が簡単だったのに対して、ガンダム対策には「クラロワをすでに結構やっていた」レベルの腕前が必要でした。
対処できずに拠点に取りついたガンダムはまさに“白い悪魔”の名にふさわしい強さを見せつけ、ジオンの初心者は「連邦強い」と吐き捨ててやめていきました。ダメ原作再現です。
確かに、この時期は実際に連邦が少し強かったと思います。
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▲URユニットは同レベルのユニットより強く調整されていることも、低レベルで猛威を振るう理由となった。

この事態を重く見た運営は、初心者を守ること目的にジオン勢力にてこ入れを行います。ここまでリリースから2週間。素晴らしい対応速度。
運営は弱かったシャア専用ザクを出して3秒後には拠点を殴り始める凶器に変え、合わせて連邦側の対策カードを弱くする調整などを行いました。
しかし、これがまたマズかった。強くなったシャア専用ザクもまた対策可能なカードでしたが、3秒で“赤い彗星”が迫ってくるのを初心者が止めることができない。
ちなみに操作性がクラロワより悪い問題もあり、私でもときおり拠点の後ろに防御ユニットを配置してしまって負けることがあります。ひどい。
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ともあれ、赤い彗星の恐ろしさを原作通りに再現した調整により、ガンソク運営は連邦の初心者を狩ることに成功します。なお、「ランク5までの戦場に行けない程度のプレイヤー(最高はランク7)」は、対策できていなかった印象があります。

1年戦争では回線から1ヶ月あまりでジオン公国と連邦軍の総人口の半分がなくなったそうですが、ガンソクもそれをなぞっているように思えます(普通のソーシャルゲームは1月で大半が離脱するものですが)。そんなところで原作を再現しないでいいのに。
今後、陣営をスムーズに移動できるようにしたり、特定の陣営に居続けることに意味がある、少数派になってもメリットがあるシステムにするとか、大アップデートのマイルストーンを見せてくれたりして我々にニュータイプ像(新バージョン構想)を見せてくれることを期待したいところです。

一方、ゲームバランスで言うと意外にとれていて、上位陣になると勝敗は拮抗していましたし、当時最上位の戦場で戦っていた私もおおよそ勝率5割程度になっていた記憶があります。
運営の発表でも「上位陣は五分というデータが出ている」とありました。
単に、クラロワをやり込んだようなプレイヤーしかついて行けないゲームバランスだっただけで、私は文句言いながら楽しんでました。今もちびちび楽しんでいます。
欲を言えば私が一番好きなガンダムである『Gガンダム』モチーフだったら、もっと最高でした。

こんな状態なので強くは勧められないのですけど、『クラロワ』をやり過ぎて飽きた皆さん、『ガンソク』をプレイしてみてはいかがでしょうか。
きれいに舗装された道を走るのも良いですが、泥道をあるくのもたまにはいい……こともあるものですよ。

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