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さらば愛しき『妖怪惑星クラリス』。私たちはゲームの中身が好きだった - サービス終了ゲームを想う3

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何も知らずに『妖怪惑星クラリス』をプレイしてすぐ辞めたとき、一般的な評価は5.5を平均として10段階で4点ぐらいでクソゲーに近い評価になるだろう。
ネット上の記事を眺めただけの方ににとっては、「製作者の頭がおかしいゲーム」なんて印象になるかもしれない。しかし、どんなゲームにも良いところはあり、楽しめるプレイヤーはいる。
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私や一部のプレイヤーは『妖怪惑星クラリス』を愛していたし、そんな評価で終わらないことを知っている。本当はプレイして味わって欲しかった、妖怪惑星の良さを少しだけ最後に書いておく。本作は決してクソゲーではなかった。

さて、すでに十分すぎるほど『妖怪惑星クラリス』については書いてきたので、過去の経緯とゲーム内容は下記の2記事を参照してほしい。もはや、システムや経緯について語ることはあまりない。
よくわかる『妖怪惑星クラリス』の歴史
ソーシャル時代だから楽しめるRPG『妖怪惑星クラリス』レビュー

ここでは『妖怪惑星クラリス』を愛していた理由だけを書く。
『妖怪惑星クラリス』については、淫夢と呼ばれるネットスラングとか、ちょっとアレなネーミングとか、そういったものがクローズアップされる。
もちろん、それらの“危なさ”が話題になったことは間違いないが、私がこのゲームをプレイしていた理由は、単純にこのゲームがすぐれていると感じたからだ。

続けてプレイしていたプレイヤー……クラリスに住む妖怪なら知っている。
キャラクターの名前や外見はテキストを読ませるための道具でしかなかったことを。
普通のゲームには世界観があり、一定の範囲で世界観に応じた真面目さやおふざけがある。
『妖怪惑星クラリス』はその“一定の範囲”が広く、その落差が面白さを生み出していた。

普段は存在自体が冗談としか思えないキャラクターたち。
そのキャラクターが、まっとうなことを言うとそれだけで驚いてしまう。
そして、そこからまた畳みかけるようにふざけたことを言うことで、下げて、上げて、落とす。
シュールリアリズムの極みがそこにあった。

プレイヤー側でもそれを利用し、メインストーリーで「いろいろな意味でやばそう」とギャグ的に処理される“チンポンデリング”に対して、実は心のうちに熱いものを秘めていたという物語を作るような活用もされていた。

妖怪惑星クラリスの世界観は他になく、唯一無二のものだった。シナリオライターも、それを活かしていた。ネット上のトレンドやおふざけがそのままストーリーに(意外な形で)活かされることもあり、他のゲームにはない物語が常に生まれていた。その、無限の可能性を楽しんでいたのだ。

サービス終了時に、シナリオライターの星野一人さん(https://twitter.com/nutu_wwwwwww)が「先までのストーリー構想はあるが、Web小説では語り切れない」と嘆いていたが、小説にしてしまうと妖怪惑星のビジュアルによるインパクトは薄れ、同じストーリーでも受ける印象は違うものとなってしまうことを指しているのだろう。

『妖怪惑星クラリス』は特殊な物語を語るための舞台が整った場であり、私は常に異常なテキストやネット上での出来事を楽しみにしつつも、そこから導き出される“『妖怪惑星クラリス』=おふざけ”という図式を崩す瞬間を一番待ち望んでいた。

周回も育成もあまり必要のないゲームシステムは、そういったテキストを読むための場としてもすぐれていた。
ふざけた世界でチャットして、テキストを読んで、最後にそのおふざけが覆されて驚く。
『妖怪惑星クラリス』は、単純に狂っただけのゲームでも、クソゲーでもなかった。ユニークなビジュアルノベルとして機能していたし、それをシナリオライターも熟知していた。それを愛するプレイヤーもいた。
むしろ、下品なネットスラングはゲームの邪魔でしかなかったのに、運営がそれを止めなかった(珍ポンデリングでも十分だっただろうが、中には性差別や実名を含むものがあった)のは残念でしかない。その点において本作が受け入れられないのはしかたないし、私自身も本記事を書くに当たって調べて「もっと早く知っておくべきだった」と後悔している点ではある。

『妖怪惑星クラリス』の終わりは“2018年を代表するゲームの事件”で“クソ事件”ではあるが、本作は“2018年を代表するクソゲー”ではない。
尖っているだけのゲームではなく、尖った部分を活かしていた。ただ、マスに受ける尖り方でなかっただけだ。

「妖怪惑星クラリスという伝説のクソゲーが……」などと言いそうになったら、ゲームを真面目に(?)プレイした人間しかわからない面白さと独自性があったことを思い出して、言葉を飲み込んで欲しいなぁ、と思う。
私たち妖怪は、妖怪惑星クラリスのゲーム部分を楽しんでいたし、愛していた。

え、半分以上ストーリーを読んでクソだと思った?
それならあなたにはクソゲーという資格があると思うから、言っていい。