遊ぶ芸術『Alto's Odyssy』レビュー。雄大な砂漠を気持ちよく走り抜けるために進化

幻想的に彩られた雪山を滑るアクション『Alto's Adventure』に、続編がやってきた。
前作の美しさを超えたビジュアルは、擦り切れるほどに前作を遊んだプレイヤーでもまた感動できるほど。
平凡すぎたゲーム部分はビジュアルを活かすように進化し、前作の欠点も克服して見せた。
『アルトのオデッセイ（Alto's Odyssey）』は、単にビジュアルで目を楽しませるだけでなく、ゲームプレイでより楽しめる“遊ぶ芸術”と言うにふさわしい作品だ。

『Alto's Odyssey』は、砂漠を滑り続ける主人公を見つつ、タッチでジャンプして障害物を避けるランゲームだ。
砂漠には様々なギミックがあり、ジャンプでロープにのったり、ジャンプ後に画面を押し続けて回転することで“トリック”が発生し、連続でトリックを決めることでスコアが上がっていくスコア稼ぎゲームになっている。

この仕組み自体は前作と同じだが、プレイは爽快感に寄せて調整されている。
前作では、このトリックを決める行為が（特に初期キャラクターのアルトで）少し難しく設定されていたが、今作は意地の悪い「初期キャラクターだとギリギリトリックを決められない」地形が出現しづらいように調整されているようだ。
おかげで、買ってすぐに気持ちよく回転できる。

新しいギミックもゲームの気持ちよさを後押ししている。
BGMに合いの手を入れるかのような音を発するツタ、長く乗っていると加速する遺跡（ルイン）、気持ちいい加速をもたらす流水など、小気味よいギミックはどれも素晴らしい。

中でも素晴らしいのはウォールグラインドだ。
模様付きの壁に重なったときに画面をタッチして壁面をすべるギミックで、新しいテクニックが必要とされるだけでなく、グラインドの終端でジャンプして加速する気持ちよさはゲーム内でも随一。
調整も、ギミックも、美しい砂漠を気持ちよく滑るために作られている。

なお、これらの要素の一部はプレイのたびにミッションをこなして解除するようになっている。
前作ではミッションクリアが難しく、運任せすぎる面があったが、今作は前半ミッションまでは普通にプレイしていればクリアできるになっている。
一通りの要素が揃ってくると運が良くないとクリアできなくなってしまうが、序盤がましになったのは改良だろう。

▲ミッションをこなしていくと、新しいアイテムや新しいキャラクターが追加されていく。

で、前作よりも気持ちよく進化したゲームのビジュアルは、システム以上に進化した。
プレイ中に朝から昼、夜へと時間が移り変わり、時間帯に応じて異なる姿を見せる砂漠の姿は、美しいの一言。

プレイ中は現実をはなれ、旅をしているかのような錯覚にとらわれる。

基本となる砂漠の他に“寺院の都”と“断崖”が用意されており、地形のバリエーションは前作比3倍。ボリューム面でも前作越えだ。

また、砂船などレアなギミックも隠されているようで、そういったものに遭遇する楽しみもある。

時間の移り変わりでステージが暗くなったり、天候が悪くなると障害物が見づらくなる欠点は前作から引き継いでしまっているが、そこはもう、このゲームの宿命と思って諦める方がいいだろう。
本作で一番優先されるべきは美しさであり、視認性は次に考えること。
「雄大な景色の中を滑る気持ちよさ」があがっていれば、それでいい。

とはいえ、その欠点はゲームを台無しにするほどではない。
前作の『Alto's Adventure』を紹介するとき「平凡なゲームに圧倒的なビジュアルがついてくる」というように書いたが、『Alto's Odyssey』はそのビジュアル面で圧倒的に進化し、ゲーム面でもそれを活かすシステム・バランスの調整を楽しめる。
ゲームが苦手なら、倒れても無限に復活するゼンモードで遊んでもいい。

期待以上に進化を果たした正当な続編で、今作こそ“遊ぶ芸術”といえるだろう。
気軽に遊べるし、誰でも楽しめるし、いつでも遊べる。スマホを持っている多くの人に自信をもってお勧めできる1作だ。

評価：8（かなり面白い）

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