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ローグライクの勘と経験を試す鑑定パズルRPG『Cinco Paus』レビュー。効果のわからない杖をひたすら振れ!

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『Nethack』や『トルネコの不思議なダンジョン』など、ローグライクの玄人プレイヤーには鑑定技術が備わっている。
これらのゲームでは、魔法の杖などを手に入れたときに効果がわからないことが多い。そこで“識別の巻物”などを使って正式名を調べるのだが、鑑定アイテムが足りないとき、玄人プレイヤーは杖を振ってみる。
で、その反応から「あ、この杖は炎の杖だ!」なんて判別する技術を持っているのだ。このゲームは、その鑑定を題材にした珍しいローグライクパズルである。

ゲームタイトルの『Cinco Paus』はポルトガル語で「5本の杖」という意味。
いま、君の手元には5本の魔法の杖がある。
いずれも強力な魔法の力を持つ杖だが、その効果はわからない。
だから今からダンジョンに挑み、杖を振りまくって効果を調べながら戦ってくれたまえ。ときどき自爆効果もあるけど笑って許せ。
『Cinco Paus』は、ランダム生成のダンジョンから、効果のまったくわからない魔法の杖を鑑定士ながら使いこなして冒険するローグライクパズルRPGである。
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ゲームを開始すると、5×5のマスで区切られたフィールドが表示される。
画面上には5本の杖。この杖を使いながら青いゴールの扉まで移動し、5回脱出してダンジョンを出るのが本作の目的だ。
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主人公は青いお爺さん。このお爺さんは1ターンに1歩だけ移動でき、敵にぶつかると移動するかわりに1ダメージ(画面上のモンスターの下にある●が生命力で、ゼロにすると倒せる)与えられる。
不健康そうな顔で肉弾戦もこなすとは中々の人物だが、ダンジョンにはモンスターが大量にいて、攻撃を受けるたびに生命力(キャラクターの下の緑の●)が減ってすぐ倒れてしまう。

もちろん、これを魔法の杖で解決するのだ。
よし、今回はエビ型モンスターを倒そう。
画面上の杖をドラッグして、エビの方向に向けてみると……おお、魔法の光線が出た!
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しかし、光線はエビにダメージを与えることなく……というか、何一つ効果を発揮しないまま消えた。
エビは何事もなくこちらに進んできたので、体当たりして倒した。次だ、次。
次の杖を振って光線を出すと、今度はトカゲの上に5つの黒点が表示された。でもやっぱり倒せない。
あ、いや、1ターン経過するたびにトカゲの黒点が埋まって、全部埋まったときにトカゲが死んだ。
5歩(5ターン)歩かせて時間差で敵を倒す……これを残悔積歩拳と名付けよう。
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さらに次。
今度の光線は……曲がり角に達するたびに反射して90度曲がる!?
しかも貫通するからすごい効果範囲だ!(ギザギザの線が効果範囲)
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曲がり曲がって終着地点で爆発を起こし……あ、自分がダメージを受けた。杖のダメージはプレイヤーにも適用されるようだ。
最初の1回は自爆してしまったが、2回目以降は広範囲に爆発ダメージを与えられる杖として活用しまくった。
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▲その後の利用図。3×3にダメージって完全に強い。

杖の効果は完全にランダムで、ゲームをプレイするたびに変わる。
一応、振ったときに判明した能力は画面上の杖の右にアイコンで表示されるが、最初はその意味すら分からない。
アイコンから効果を推測して、ゲーム内のデータを把握していくのはインターネット攻略サイトがなかった頃にゲームをプレイしているかのような……そんな手探り感がある。
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▲あの頃、意味のわからないゲーム要素は魅力の1つ(糞ゲー要素だったりもするが)だった。

ダンジョンは全4階層で、序盤は敵が弱いが、後半は敵がものすごく強い。
そのため、前半は魔法の杖を素早く鑑定し、後半は判明した効果を使いこなして脱出する戦術が重要なゲームとなっている。
このあたりは上手く設計されていて、装備を調える→正しく使ってクリアというローグライクの王道が楽しめる。
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そんなこんなでダンジョンを4回相当はするとタイトル画面に戻って一応クリアとなるのだが……死なずに連続でクリアするとスコアが蓄積されていく。つまり、1度死ぬまでスコアが増え続けていく。
少し慣れたら、やり込み要素が増えていくわけだ。

ここで重要になるのがお宝。ステージ上に必ず1つ鍵が落ちていて、これをとってドアを開けると、お宝を得られるのだ。
無理にとらなくても進めるが、取得したお宝はゲーム終了後得点として計算される。単なる得点アイテムから、生命力回復、杖の効果を鑑定するお宝など、とれれば役立つこと間違いなし。
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▲モンスターたくさんなので、クリアするだけなら出口直行が早い。

さらに、お宝の宝玉を5つ、もしくは鍵を5つ集めると特殊能力を身につけられるコンプリートボーナスもある。
これを手に入れるのは本当に難しい。しかし、手に入れるとスコアは伸びる。
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▲効果をどうしても知りたければ、Google翻訳すると良い。

で、ここでまたローグライクのお約束が炸裂する。
生きて周回プレイするほどにダンジョンが難しくなるので、できれば早めに能力を手に入れてスコアを稼ぎまくりたい。
そこで、上級者は「いらない物をランダムに変化させる杖」や「物や敵を倍に増やす杖」などを使ってチートくさい稼ぎに入るのだが……せっかく序盤でそういった魔法の杖を手に入れても、欲をかきすぎて「アイテムを増やすつもりが、最強の敵を増殖させてしまった!」とか、そんな事故が多発するのだ。

シンプルな5×5のダンジョンなのに、ローグライクの悲喜交々が凝縮されている。
同じ作者の前作である『Imbroglio』も素晴らしかったが、このゲームもまた素晴らしい出来だ。
新たなパズルRPGの王者。戦術と戦略を試すゲーム『Imbroglio』レビュー
パズル好き、ローグライク好きの方はぜひ本作を試して欲しい。

なお、App Storeを見るとポルトガル語にしか対応していないことに驚く方もいるだろう。だが、これには作者の特別な意図があってのことで、プレイに支障はない。
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▲読めない!でも大丈夫。

ポルトガル語を採用したのは、すべてのプレイヤー(※英語基準)に手探りで遊んで欲しくて、読めないけど何か書かれていることがわかる言語が欲しかったからとのこと。当初は(読めない前提で)英語対応と書かれていたが、現在は「英語ではないので低評価」ラッシュを食らってポルトガル語対応と明示されている。
つまり、本作はテキストが読めないことが前提で作られている。安心して、作者の意図通り手探りでプレイする楽しさを味わって欲しい。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
ローグライクの鑑定&使いこなし戦術を凝縮
テンポの良い効果音
杖もダンジョン構造もランダムだから何度も遊べる

気になるポイント
杖の鑑定には運要素も大きい

アプリDL:
Cinco Paus (itunes 600円 iPhone/iPad対応)

開発:Michael Brough(ニュージーランド)
レビュー時バージョン:1.0.3
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ