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セガと任天堂の争いから、現代までを生きるゲーム開発会社SLG『Game Dev Tycoon』レビュー

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ゲーム黎明期からセガと任天堂の争い(※会社名はゲーム独自の架空の名前になる)、そしてソニーとマイクロソフトの参戦からスマホまで、ゲームハード戦争の歴史をなぞりながら、その中でソフト開発会社として身を立てる“ゲーム会社経営シミュレーター”が登場した。
『Game Dev Tycoon』だ。
本作はカイロソフトの『ゲーム発展国』に影響を受けて作られており、面白さの根本は似ている。しかし、現実のハード競争の歴史をなぞったり、ゲームエンジンを開発したりと西洋史観に基づいたゲーム会社運営になっており、また1味異なるプレイを楽しめるはずだ。

ゲームはガレージからスタートする。
アメリカのスタートアップ企業はいつもガレージから始まる。Microsoftのビルゲイツも、Appleのスティーブ・ジョブズも、みんな固定費の安いガレージから始まった。
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初期のゲーム開発はとても単純だ。まず「Develop New Game」を選んでハードを選択する。
ゲーム開始時はコモドール64(64KBもメモリを持つホームPC)をモデルにしたと思われるG64と、開発費が安い安価なPCのマーケットの2つから選択できる。
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続いて「ジャンル」と「テーマ」を決めて開発開始。市場に出ていない新しいジャンルとテーマの組み合わせや、海外でヒットが出ている作品の組み合わせにはボーナスがつく。
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続いて、ゲームに使用する技術の選択。これも2Dグラフィックを採用するか、テキストベースで作るかの2択。より高度な技術を採用するほどお金がかかる。
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さらに、開発中は「エンジン」「ゲームプレイ」「ストーリー/クエスト」などの9項目のつまみを調節して、どこに比重を置くか選択できる。
今回はミリタリーテーマの戦術ゲームだから「ゲームプレイ」と「AI」に力を入れてみた。
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その後、時間と共に主人公の頭から泡が発生して画面上の“バグ”、“デザイン”、“テクノロジー”、“Reserch(開発)ポイント”の数字があがっていく。
開発機関が終わるとデバッグ期間が始まり、こんどは時間と共にバグが減っていく。バグがなくなったら(残ったまま出すこともできるが)“FINISH”を押すといよいよゲームのリリースだ。
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まず、ゲームがリリースされると各雑誌メディアのレビューが入る。
6.短いが良い(Star Games)
6.ゲーム名のように多くの要素が取り入れられている(Informed Gamer)
6.ミリタリーとストラテジーは素晴らしい組み合わせだ(Game Hero)
7.良い体験(All Games)
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この結果次第で売り上げは大きく変動するので、かなりドキドキする瞬間である。
このとき、「グラフィックの向上がゲームに良い結果をもたらしているね!」などと開発コンセプトがコメントに結構反映されるのが嬉しい。
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▲売上本数次第ですぐ破産してしまうので注意。

そうして、ゲームを売っているとReserchポイントが貯まって、今度は新しいテーマやジャンル、さらに「進化した2Dグラフィック」や「ステレオサウンド」などの技術の開発が可能となる。
テーマやジャンルなどは開発してすぐに使えるようになるが、技術に関しては独自の“ゲームエンジン”を開発し、予算をかけてゲームエンジンを作って初めて使えるようになる。
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新しい技術を使うとお金はかかるが、ゲームの内容は良くなるし、ゲームの評価も上がるし良いことだらけ。
ゲームの歴史に沿ってNinvento(任天堂がモチーフ)やVega(セガがモチーフ)のハードが出てくるので、ユーザー層や費用を計算して参入し、どんどん技術を強化してゲームを作るのが序盤は楽しい。
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そうして1発ヒットを飛ばせば、オフィスを購入して人を雇い、さらに素晴らしいゲームを開発できるようになる。
人が増えると倍々ゲームでゲームのデザインやテクノロジー値が良くなり、ゲームもさらに売れるようになる。パブリッシャーと契約して広告してもらえば、100万本ヒットなんて簡単に作れる。
この瞬間、本作には経営ゲームの根源的にある成長の面白さに満ちている。
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しかし、時代が進むにつれてのびのびとした開発の時間は終わる。
PS2相当のハードやスマホが出る頃には開発費は高騰し、人件費も馬鹿にならなくなる。
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人材も育成しなければいけないし、巨大企業になればゲーム発売前に宣伝したり、G3ショー(ゲームの展示会)に出展してHype(ゲームの期待度)を上げなければいけない。
技術研究やゲームエンジンの刷新にも時間やお金がかかる。
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ゲーム開発の管理も難しくなる。
巨大なゲームの開発では様々な人材を別々の箇所に割り当てる必要があり、さまざまな技術をどのように使うのか、誰を働かせるのか計算も必要になる。
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▲開発時、技術を注ぎ込みすぎると項目の達成度が100にならず、ゲームの完成度が下がる。上の画像だとArtifical Inteligenceが92%。このときは技術を諦めるか、スライダー調整で変えないといけない。

時代が進むにつれて開発は長くなり、ゲーム1本あたりにかかる金額も増えていく。
カイロソフトの『ゲーム発展国』はゲームが進むにつれて簡単になるが、本作は現実のゲーム製作を反映してどんどん厳しくなる。
そうして1本でも外すと広告費が回収できずに潰れるような状況に。
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▲最終的には研究施設を持ってAAAタイトルやハードの研究を行う規模になる。

面白いゲームで業界に旋風を起こすはずが、気づくと人気ジャンルや人気作の続編ばかりを作っている……システムはお手軽で楽しいのに、最初の気楽さと裏腹に32年分のゲーム時間を終えたとき「あ、ようやく終わってくれた」とこぼしてしまった。
単にゲーム会社経営ゲームとしてだけでなく、ゲーム開発参入が気軽だった頃から大企業になっての苦労までを体験できるシミュレーターとしても良くできている。
それはもう、EA(世界でゲーマーに最も嫌われると言われているが、面白い大作を出す企業)も保守的になるわ……。
ゲームハードの歴史を感じつつ、ゲームを経営する面白さを体験したいならこのゲームはおすすめだ。
ゲームは英語のみだが、『ゲーム発展国』をプレイしていれば内容はだいたいわかる。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
ガレージから大企業までゲーム開発体験ができる
お手軽で止められないプレイ
オリジナルエンジンを作って最高の作品を作ったときの達成感

気になるポイント
難易度は少し高め

アプリDL:Game Dev Tycoon (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / Steam)

開発:Greenheart Games(日本)
レビュー時バージョン:1.0.9
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ