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任天堂による農園系ゲームの決定版『どうぶつの森ポケットキャンプ』レビュー。期待は100%満たしていないが、良い

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『どうぶつの森:ポケットキャンプ』(以下、ポケ森)は、確かに任天堂の力が結実した素晴らしい作品である。もとより『どうぶつの森』が農園系ゲームに近い“スローライフ体験ゲーム”であったため、ポケ森には任天堂のスマホ向けゲームの中でも格別の期待感があったが、その潜在力を見事に活かした作品に仕上がっていた。
実際、バトル系ゲームが好きな私でも結構楽しんで遊べていて驚かされている。
しかし、同時にポケ森は期待外れのゲームでもあった。おそらく、ゲームキャストの記事を読むようなゲーム好きの7割にはモヤモヤする部分があるのではないだろうか。
今回は、このポケ森がなぜ素晴らしく、同時になぜ期待外れなのか説明していきたい。

11/26、22:50修正:
最後のソーシャルゲームの広告方法についての行を消し、タイトルをポジティブにしました。

ポケ森は、キャンプ場の管理人となって、さまざまな家具を配置してどうぶつ達が楽しめるキャンプ場に仕上げるゲームである。家具は素材を集めて作るので、まずはミニマップから素材のある場所に移動することとなる。
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▲過去作品では、広い森を自由に移動できたが、今作では細かいマップに区分けされている。

各マップには、むやみやたらに可愛いどうぶつ達がいる。
素朴なグラフィックと独特の効果音、その姿と動き。『どうぶつの森』に思い入れはないが「なんだ、この可愛い生き物は!」とクラクラしてしまうほどの可愛さである。
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本気で可愛いので、個人的に好きなショットをもういっちょ。
個人的にこれだけで、アプリを遊び続ける価値があると思えた。さすが任天堂の看板タイトル、あざといぜ(褒め言葉)。
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話はそれたが、家具を作るにはどうぶつ達と話して、“おねがい”を聞いてあげる必要がある。
“おねがい”というのは、つまるところミッションで、特定のアイテムを持ってきて欲しいというおねだりである。プレイヤーがマップで魚や果物、虫などを取ってきて、どうぶつに渡すとお礼として家具素材が手に入り、そのどうぶつとの友好度も上がる。
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そうして家具を作成していき、特定の家具がそろうと友好度の高いどうぶつはキャンプ場に呼べるようにもなる。登場するどうぶつや作れる家具は決まっているが、どうぶつとの友好度を上げてプレイヤーレベルが上がると作れるものの種類も増えていく。
どうぶつと仲良くなり、家具を作って、レベルアップしてまた新しい家具を作って……これを繰り返すのがポケ森である(一応、キャンピングカーをデコレーションすることもできる)。
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ソーシャル要素はそれなりで、いらないアイテムをバザーに出して出品したり、他の人のキャンプを見に行ったり、通常は有料アイテムが必要な鉱山地域にフレンド5人の応援があれば1日1回は入れるという仕組みがある。
課金要素は“リーフチケット”という通貨に集約されており、リーフチケットを支払うと家具を作るときに必要な時間を短縮し、おねがいに使用する素材類を瞬時に大量に集めることが可能になり、リーフチケット専用の家具も買える。とは言え、どれも現段階では課金必須と言うほどではない。
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▲課金専用家具で登場するとたけけさん(犬)、リーフチケットかフレンドの応援では入れる鉱山(右)

そんなポケ森だが、プレイしていると素晴らしい部分と期待外れな部分がすぐ見えてくる。
まず素晴らしい部分から紹介していこう。最初にオーストラリア先行配信で『どうぶつの森』ポケットキャンプを触ったときに、『どうぶつの森』の雰囲気を残しており、かつほかの農園系ゲームよりも課金が安くて優しそうということを書いた。
『どうぶつの森 ポケットキャンプ』テスト配信版感想
ここにもう回答があって、ポケ森は一般的な基本無料の農園系ゲームを『どうぶつの森』アレンジしたゲームであって、従来のライフシミュレーターではないのだ。
重要な資源のある鉱山に行くためフレンドに協力を頼む手法も、バザーでアイテムを交換する手法も、特別な建物が有料になる手法も、全部農園系ゲームのもの。
そして、農園系ゲームの一種として見たとき、ポケ森の素晴らしい出来だ。

あくせく農作物を植えなくても勝手に実がなるし、どうぶつ達は魅力的だし、キャンプ場でどうぶつ達が過ごす様子も見応えがある。
自由度も高い。農園系ゲームではレベルアップと同時に新しい設備が増えていき、それを順番に作っていくレールが敷かれている。しかし、ポケ森では次々とどうぶつが増えていくため、レベルアップした後で「どのどうぶつの家具から作ろうか」と悩めるのだ(普通の農園系には選択の自由はないし、無課金の家具は寂しいほど見栄えがしない)。
また、海外の農園ゲームは有料アイテムをプレイヤーにほぼ渡さない鉄則を守っているが、ポケ森では潤沢にリーフチケットが配られるため、特に序盤において比較にならないほど快適さを誇る。他の農園系ゲームのように雀の涙ほどの有料アイテムを貯めずとも簡単に倉庫拡張し、有料の家具すら買えてしまうのだ!
『ヘイデイ』のヒットから、農園系ゲームはモチーフ変更の勝負であった。しかし、そのモチーフで圧倒的に勝利しつつ、なおかつ自由度も高く、快適さも上で「農園系ゲームの中でも最高の1作」とも言えるゲームになっている。
どうぶつの森のエッセンスを抽出しつつ、新規に触るプレイヤーにも遊びやすい1作となっている。

ところが、これまでの『どうぶつの森』ファンで、自由度の高さを評価していたプレイヤーから見ると話は変わってくる。
このシリーズはどうぶつたちが暮らす村にプレイヤーが移り住むと同時に家のローンを背負い、返済しながらもプレイヤーそれぞれに目的を見つけて自由気ままに生活する「ライフシミュレーター」だった。
村の住人だってゲーム機版はランダムだったが、ポケ森はレベルアップのたびに決まった順番でどうぶつが出てくるに過ぎない。住人を選べない中で理想の村づくりをする「不自由だから楽しかった」面はない。むらメロ(プレイヤーの村に入ると鳴るBGM)を楽しんだり、マイデザイン(床や服などのデザインを自作できた)で差別化したりする自由度もない。
本作は農園系ゲームであり、「自由なライフシミュレーター」ではないからだ。それ期待をしていたプレイヤーには評価が低くなることだろう。

私は後者のマニア側の人間なので、犬だけを集めたキャンプ地を作るため、必死に「引っ越し前の犬(過去作では他の村から引っ越し機能があった)はいませんか?」などと交流したり、Mittomoのように住人がフレンド同士をつないでくれたり、マイデザイン家具の売り買いができたりしたらすごく楽しいだろうと妄想していた。それがかなわなかったのは残念に思っている。
一方で、農園系ゲームとしてみると私でも楽しめるほどに農園系ゲームとして良くできていて、現在のところ違うゲームとして楽しめている。スタミナに相当するものがないので、張り付いていると無限にプレイして作業感が出てきてしまうところだけが気になってはいるが。
『どうぶつの森』で自由度より触れあいが好きだったファン、農園系ゲームが合うプレイヤー、そして普段ゲームをしない人々にとっては素晴らしい作品になっているはずだ。

ただし、後者に属するプレイヤーでも自由度が減ったことを嘆くことはない。
「ゲーム機版は消えたが、ソシャゲだけが残った」作品と異なり、任天堂はスマホ向けに作ったシリーズ作品のゲーム機版も作り続けているから、Switchで正当な続編を遊ぶことは期待できる。
スマホ版は、エッセンスを抽出した違うゲームとして良くできているのだから、根を詰めずに遊ぶのが良いだろう。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
圧倒的にかわいいどうぶつ
適当に遊んでも許される緩さ
農園系ゲームとしては自由度も高く、課金しなくても見栄えする家具が次々作れる

気になるポイント
ずっとプレイし続けるとやることが作業になる
従来のシリーズより自由度は低い

アプリDL:
どうぶつの森 ポケットキャンプ (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

開発:任天堂(日本)
レビュー時バージョン:1.0.1
課金:リーフチケット(専用アイテムや素材、時短に使用。なくても遊べる)

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: