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ナゾを解く楽しさはシリーズ随一『大逆転裁判―成歩堂龍ノ介の冒險―』レビュー。システム面は一番好きな逆転裁判

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初代『逆転裁判』を遊んだ時から、こんな逆転裁判を遊びたいと思っていた!
それが私にとっての『大逆転裁判―成歩堂龍ノ介の冒險―』だ。
本作の時代は明治。成歩堂龍一の先祖である成歩堂龍ノ介が弁護士になるために倫敦(ロンドン)で受けた受難を描いた物語だが、過去作とのつながりがないのでゼロから始められる。
キャラクターは魅力的だし、謎解きと探索のテンポが良いし、科学的な調査が少ないアナログな推理が楽しいしで、新シリーズのスタートとして上々の出来だ。

逆転裁判は、主人公が事件の弁護人となり、"探偵パート"というアドベンチャーパートで地道に事件の証拠を集め、その証拠をもとに"法廷パート"で被告のアリバイを証明していく……証拠をもとに論理的な推理を重ねるアドベンチャー+論理パズルのゲームである。
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初代からシリーズ通してこの構成をとっており、実際に十分すぎるほどに面白かったのだが、私には1つの不満があった。
それは地味に証拠を集める"探偵パート"が面倒だということだ。移動を繰り返して、とにかく調べて、間違ったら別の場所に移動して……最近は親切になったが、地味に調べる作業が面倒。
地味な調査があるから、謎を解いたカタルシスが存在するのはわかる。調査中に面白いテキストが隠れているのもわかる。しかし、それでも長時間調べたくなかった。
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私にとっての逆転裁判とは、論理パズルの楽しさとパズルを解いた結果のストーリー進行のカタルシスによって構成される作品だ。わがままではあるが、探索はないと寂しいのに長くやりたいものではなかったのだ。
実際、『大逆転裁判』でも第2話の途中までは結構つらかった。だが、そんなところにヤツがやってきて、悩みを全部解決してしまった。

ヤツの名はホームズ。大逆転裁判の時代に、ロンドンで活躍したという名探偵である。
奇抜なポーズと、無茶苦茶な論理展開で今作で最も存在感のあるキャラクターの1人だ。
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そのホームズだが、今作ではある程度の証拠を集めると龍ノ介と"共同推理"を始める。
まず、稀代の名探偵であるところのホームズが証拠をもとに鋭い推理を展開する。ただし、ホームズの発想は良いのが、結論はいつもずれている。
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共同推理はそのズレを龍ノ介(プレイヤー)が修正し、正しい結論を導くというシステムである。
これまでの作品でも探偵パートで証拠を突き付けたり、推理して隠し事を暴く要素はあった。
しかし、今作では多くの場所で共同推理が行われて調べるだけの時間を短縮する役割を担っている。それと同時に、プレイヤーが論理パズルを解く回数も増えているというわけだ。
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これによって論理パズルをもっと遊びたかった私の欲求は満たされた。
ホームズはキャラクター的にいい味を出しているだけでなく、おバカさんのようで大人物でもあるような底の知れない描写もあり、そういった意味でも非常に良かった。
で、十分な証拠が集まれば検事と争う法廷パートが始まる。
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▲今回のライバルはバンジークス検事。聖なる杯を破壊するシーンは必見。

これもまた基本はシリーズの流れを踏襲しているが、少しだけいつもと違う。
基本的には事件にまつわる証言を聞き、"ゆさぶる"で新しい証言を引き出したり、不自然な態度の証人を"問い詰める"ことで、証拠とのムジュンを暴く論理パズルとなっている。
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ただ、今回は論理だけが罪を裁くのではない。
裁判に対して倫敦から6人の市民が陪審員として参加し、各々の感情で有罪か無罪かを判定し、6人全員の意見が一致したときに判決が下る陪審員システムが導入されている。
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陪審員たちには「あの人がこんなことをやるはずない」とか、「あいつはコソコソしていたから犯人だ」感情に基づいて判断を下すことも許されており、龍ノ介には何度となく有罪判決寸前の逆境に立たされる。
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陪審員全員が有罪を選択すると、最後に有罪の判断理由を述べ、弁護側がその内容を照合する"最終弁論"に突入する。 ここはムジュンを暴けなければ即有罪となる大逆境のなか、このパートは陪審員同士の発言を"ぶつける"ことで比較し、ムジュンを暴く論理パズルとなっている。
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何度も最終弁論が訪れるので最後はマンネリ感が出ていたが、陪審員の投票の様子は視覚的にインパクトがあるし、感情で動く様子はすべてが理屈でもない時代の世界観を感じて良かった。
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▲票が炎の弾丸になって飛ぶ!意味不明だけどインパクトある。

もちろん、「異議あり!」からムジュンを暴いて逆転するカタルシスは健在で、コアの面白さも損なわれていない。
また、科学捜査などない時代だからこそのアナログな推理も楽しい。むしろ、監視カメラ(写真があるけど)や血液検査のある現代に戻らなくてもいいのではないだろうか。そう思ってしまった。
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▲食事の食べた食べないなんて、現代だったらDNA鑑定で一発だ。

各章の冒頭に挟まれるシャーロックホームズの小説をオマージュした演出もいいし、(正しいかどうかはさておき)19世紀の倫敦の風俗が垣間見えることも魅力的だし、ずっとこの世界にいたい。
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そんな感じで、舞台良し、探偵パート良し、裁判パートもこれまで通りに良し。
私は『大逆転裁判―成歩堂龍ノ介の冒險―』を心底楽しんで進めていたし、シリーズの中でも最高にお気に入りになる予感がしていた。
ゲームが終わるまでは。ゲームが終わったとき、少しだけ評価を下げる事件が起きたのだ。

シリーズのお約束であるところの過去の裁判が最後の事件につながる展開、個性的なキャラクターの掛け合いもあったのだが……多くの伏線が回収されずにラストで風呂敷が一気に広がってしまうのだ。
十分に楽しめはしたのだが、少しだけすっきりしない。
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▲コイツ誰?

また、検事のバンジークス、ワトソンにホームズ……良いキャラが勢ぞろいしつつも、最後まで何かを隠し続けているように見えるヒロイン、御琴羽寿沙都には愛着がわかなかった。
おそらく、次回作でなにかでかい物がヒロインから飛び出すとは思うのだが……そういった意味でも消化不良だった。
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▲夏目漱石もいいキャラだったなぁ。

『大逆転裁判 前編』のつもりで遊んでいたらそんな気持ちにならなかったのだと思うが……ゲームのタイトルが悪かったかもしれない。
そんなマイナスはあれど、それ以上に倫敦の街や住人は魅力的だし、プレイしやすいし、実際に面白い。逆転裁判シリーズを今から始める方にも『大逆転裁判―成歩堂龍ノ介の冒險―』はおすすめだ。
(スマホでリメイクされた1~3も面白いが、さすがに見た目も操作も少し古くなってしまっている)
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システム的な面で言えば最高に好みなので、1作目の伏線を踏まえた2作目はもっと楽しくなるに違いない。
すでに3DSでは続編が出ており、これが(ネタバレを避けて生きているが)また評判が良いのでスマホでプレイできる日が楽しみだ。

なお、本作についてApp Storeのレビューで落ちると書いてあるが、iOS10.3.2で1話~4話とiOS11で5話の動作を確認している。メモリを十分に空けて(残りがないと落ちる)遊べば問題ないはず。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
 3DSより画質が良い
 論理パズルがテンポよく出てくる展開
 印象的なキャラクターたち
 アナログな操作と推理が良い

気になるポイント
 区切りはついたが完結していない
 事件のインパクトが弱い
ホームズ登場(2話中盤)までのもたつき

アプリDL:
大逆転裁判 (itunes 120円 iPhone/iPad対応 / GooplePLay)

開発:CAPCOM(日本)
レビュー時バージョン:1.00.01
課金:2,400円(全ストーリー一括購入)

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: