ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

ライブの興奮が、プレイヤーに伝わる。新しいアイドルゲーム 『KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE』レビュー

puri11
正直、リズムゲームは飽きた。上からノーツが落ちてきて、タイミング良くタッチして……曲や演出が違えば嬉しいけども、そろそろ変化が欲しい。
そんな方にこそお勧めしたいのが、本日紹介する『KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE』である。
本作はプリズムスタァと呼ばれる男性アイドルが活躍するアニメ『KING OF PRISM by PrettyRhythm』のゲームだが、ただ安易に作られたキャラクターゲームではない。
そこには素晴らしいライブミニゲームと、シュールギャグの世界が待っている。

App Storeの説明文から判断するに、本作は4人のスタァでチームを組むリズムゲームであるらしい。
何はともあれゲームを始めるとロード開始と共に歓声が上がり……ロードが終わるやいなやジャンプと共に主役登場!
akablurr_2

これは新しい……アイドルライブの花道を再現するゲームなのか。
実際、リズムゲームは大味だがスタァの姿を見せることに全力を注いでおり、キャラクターゲームとしてはあり。
puri03

花道に設置された輪と重なったとき、タイミング良く画面を操作するとスタァが次々と魅惑のアクションを展開し、そのキャラクター性を見せつける。
ランゲームでは主人公の背中しか見えないなどと言われるが、スケートなので背面走りもあり。3Dキャラクターのクオリティも高い。
pru10

ただ、単調ですぐ飽きるかな……などと思った矢先。
会場の歓声が高まって「連打で拍手をしよう!」と表示され、連打とともに「○○さま~」とか「きゃー!」などの歓声が上がる。
この部分、どうにもランダムでいろいろ合成しているようでお約束の世界を越えてライブ会場にいるかのような臨場感の演出に成功している。
puri04

拍手の後はスタァの視線にあわせてタッチ。
視線を上手く捉えるとアイドルがプレイヤーに向かってほほえむ。
puri05

最後にジャンプを決めて、次のメンバーにバトンタッチ。
すごい。完全にアイドルの入場シーンを再現している!
このゲームは音ゲーではない。観客の気持ちになって歓声を上げ、スタァの視線の向きに一喜一憂する「アイドル入場シミュレーター」だったのだ!
puri07

これが女性のハートをつかんでApp Storeの上位に押し上げる原動力になったに違いない。
『アイドルマスター』系のライブゲームのようにTV越しに綺麗なアイドルを見るのも良いが、この泥臭い臨場感にはまったく別の興奮がある。
本作はアイドルゲームに新たな息吹を吹き込む表現を実現している。素晴らしい。

そう結論してゲームを終わろうとしたのだが……どうも腑に落ちない。プリズムラッシュの演出に乙女ゲームとして違和感を感じてしまうのだ。
ライブでは華麗な動きを決めるのに、セリフは「はぁあああ!」とか、「ぶっつぶしてやる!」とか、彼らは男らしすぎる。
しまいには“必殺ジャンプ”を開発し、「スタースプラッシュッ!」とかジャンプマンガに登場しそうな技名を叫び始める。イケメンだろうが、女形だろうが、皆妙に男らしい。
puri06

で、謎を解き明かすべく真面目にストーリーモードを見て愕然とした。
キンプリのストーリーも登場人物も、熱血少年マンガの主人公でしかないのだ。すべての問題は必殺技が解決する。
そこに乙女ゲームっぽい語感が入っているせいで、ストーリーモードがシュールなギャグにしか見えない。
puri12
▲とうとう、プリズムジャンプを成功させたのだった。

シリアスシーンでも、とにかくギャグを入れ込むことに余念がない。
人気の先輩が引退して後輩にバトンを託すシリアスなシーンで……。
akablurr_5

なぜかギリシア風衣装で登場し、緊張感を突き崩す先輩。
(このあと必殺ジャンプが炸裂して円満にシナリオは進んだ)
akablurr_3

とにかく困ったら必殺ジャンプ。
「シンが空に……いや!宙に、羽ばたいていく!」
「おめぇの気合い、全人類に……ぶきかましてやれー!!」
ライブではないのか、これは。最終決戦のようなテンションで解説が入って、物事が円満に解決していく。
puri08

普通の乙女ゲームでは、ピンチが訪れたらヒロインとのやりとりや友情の力などで環境を変え、精神的に解決する。
しかし、キンプリの場合はピンチに必殺技を編み出し、肉体的に解決するのだ。
ガチャも肉体派。ガチャで引き当てたスタァ自身が全力でチャリを漕いでプレイヤーの元にやってきて、ブロマイドを手渡しする。
puri02

すべて何かがずれている。それが面白い。私は気づくとこの世界観にはまり、体が勝手に課金していた。
ライブミニゲームもストーリーも、全てはこの『キンプリ』の世界観を表現するためだけに作られている。本作は30分ほどでプレイヤーに『キンプリ』の魅力を叩き込む凶器だったのだ。
pri01
▲悪役のセリフも少年マンガ。

正直、ゲーム単品としてみると単調であり、長く継続して楽しむには難がある。
ストーリーは面白いが曲数は少なすぎるし、プレイは単調。キャラクターを育てなければ能力不足で高難易度ライブクリア不能と、古のソーシャルゲームかのような設定でこのまま続けるのはとても厳しい。
ガチャ確率もKPRを持っているプレイヤーを見るとフレンドにいて喜ぶより先に「この人の財布は大丈夫なのか」とあらぬ心配をしてしまうほど渋い。
kin_1
▲燦然と輝くKPR0.178%。

ライブごとにステージや振り付けが大きく変わったり、ジャンプ技が3Dで表現される、育つほどに観客のリアクションや声が大げさになるなどの楽しみがあればもう少し良かったように思うのだが……。
3D映像やゲームシステムも含めてポテンシャルのあるアプリだが、長く遊ぶ深みや物量の準備を怠った状態で出されてしまったように感じられる。

とは言え、現段階でも「キンプリの世界に入門する」ゲームとして最初の30分だけで元が取れる。ライブの空気を再現する指向のゲームとしても興味深い。
『テニスの王子様』などの少年向けシュールギャグマンガが好きな方や、既存のライブ系リズムゲームに変化を求めているプレイヤーなら遊ぶ価値があるだろう。

評価:6(面白い)

おすすめポイント
シュールなギャグ世界
ライブ入場シーンの熱気を再現したミニゲーム

気になるポイント
曲数や遊びが少なくて単調だが長く遊ぶモチベーションもない
ガチャは渋いし、レアがないとステージクリア不可

アプリDL:
KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE (itunes 基本無料 / GooglePlay)

開発:avex picture/syn Sophia (日本)
レビュー時バージョン:1.0.3
課金:ガチャやカード枠拡張など。

ライター:ゲームキャスト トシ