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レベル5の短編集『GUILD01』のなかで、なぜ『解放少女』だけ移植されたのか? - 32bit遺産第4回

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まだ『妖怪ウォッチ』のヒット前……2012年にレベル5が超有名クリエイターを集め、3DS向けに『GUILD01』という短編ゲーム集を作った。
その中の1本、須田剛一さんによる美少女×機械のシューティングが『解放少女』である。
当時はゲーム機から現役のゲームが移植されるだけで大騒ぎだったが、『解放少女』は格が違った。
3DS版よりグラフィックを強化し、操作にも問題なかった……というか、反応が鈍い感圧タッチパネルを無理に使ったゲームより静電式タッチのスマホの方が操作しやすい奇跡が重なり“完全版”と言うべき内容になったのだ。
しかし、その完全版は今、旧版より早く消えようとしている。iOS11で遊べなくなるゲームを紹介する32bit遺産の第4回は『解放少女』だ。
本作の舞台は今から100年後、大国に支配された日本。大国の機械群が巣くう日本を解放するため、ヒロイン翔子が“解放機カムイ”に乗って単身戦うシューティングゲームである。
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ゲームとしてはマップを自由に動き回ってミッションをこなし、ボスを倒す見下ろし型のロックオンシューティング。基本操作はバーチャルスティックでの移動と攻撃したい場所をタッチするロックオン攻撃の2つだけなのだが、複数の視点が存在するのが特徴となっている。
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加えて画面左上の水平移動ボタンをタッチすると特定の敵を中心に据えてその周囲を水平移動するようになり、視点も変化する。
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また、ボス戦ではボスを正面に見据えた視点に変化し、上下に移動できることもある。
この辺りの視点変更と移動方向の変化は慣れるまで厳しいが、ゲームの難易度自体は高くないので問題ないだろう。ここを押さえるかぎり、本作は単なるロックオンシューティングである。
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で、その面白さはどこにあるのか……と言われると、攻撃と防御のメリハリにある。
まずゲームの駆け引きとして、主人公の持つ“シールドバレット”という兵器が面白さを演出している。
攻撃時、プレイヤーはシールドバレットと同じ数まで敵をロックオンして攻撃できる。シールドバレットの数=攻撃力となるわけだ。
防御面では、ダメージを受けたときにシールドバレットが減り、1つでも残っていればいつまでも行動できる。つまり、シールドバレットは防御力でもある。
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▲画面右の中央の赤い円がシールドバレットの残数。

つまり、ダメージを負っていないときは大火力で敵を爽快に一掃できる。しかし、ひとたびミスすると攻撃力が減り、一気にピンチに追い込まれるのだ。
回復の方法は、敵にダメージを与えて回復アイテムを取得することのみ。ダメージを受けて攻撃力が下がっているのに敵を倒しに行かなければならないのだ。そのため難しくなるほどにダメージを受けたら厳しいリカバリーを強いられる。ただし、回復してから圧倒的な反撃の気持ちよさがギャップで大きくなる。
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▲敵を倒すと緑の光が出てきて回復する。

巨大ボス“大型クサビ”の圧倒的な攻撃に苦しめられたからのとどめの一撃演出、エネルギーを貯めての必殺技(フリックで切りまくり!)も上手くできていて、厳しいときは厳しく、気持ちいいときは気持ちよくするメリハリが効いている。
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全5ステージ、難易度は3段階。
迷ったときにチュートリアルで説明されない全体マップでカバーする点や、視点と移動変更に慣れが必要ではあるが、短い中に内容が詰まっていて楽しめる。
タイムアタックを始めると動きが最適化され、破壊の気持ちよさが増していくのも楽しい。
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▲迷ったらマップを見ると攻撃対象が*で表示されている。

これで360円はお得だ。で、ここからは余談になるのだが『GUILD01』に収録された作品の中で、なぜ『解放少女』が移植されたのかを今更になって考えた。
思えば短編集『GUILD01』はお宝の山だった。『オウガバトル』の松野泰己さんの『クリムゾンシュラウド』、『シーマン』の斉藤由多加さんによる『AERO PORTER』、そしてなぜかお笑いタレントの平井善之さんによる『レンタル武器屋DEオマッセ』も、どれも良かった。

あの短編集の中で唯一移植されたのは、続編(『解放少女 SIN』)が開発中だったからと一番最初にレビューしたときは考えていたのだが、3DS版を遊んだ現在は意見が異なる。
もちろん続編も理由あるが、『解放少女』はスマホに移植したときに3DSより面白くなる可能性があるから移植されたのではないか、そう考えている。
(参考:レビュー:解放少女 太く短くぎっちり詰まった爽快3Dシューティング

その特徴は、まずビジュアル。クオリティの高いアニメと専用の挿入歌が短編ゲームのためだけに作られたというのが売りだった。これをiOSのRetina解像度にしたとき、その魅力は3DS版よりも上になったように感じる。
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▲3Dではなくなったが…。

3DSでは感圧式のタッチパネルを使用していたロックオン操作やについても、指で快適にロックオンできるスマホの方が気持ちよく操作できる。
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水平移動がボタンで切り替えられる3DS版の方が移動についてはやりやすいのだが、総合的に見るとグラフィックの向上や、タッチパネルの変化の恩恵を一番受けるのが『解放少女』だったから移植された……なんてことを今になって考えているわけだ。
それぐらい、良い感じにコンパクトにまとまっている。

いずれ使えなくなる32bitアプリではあるが、本作は内容的にも良いしボリュームとしては小さめだ。
64bit時代が来る前にきっと終わるので、紹介が気になったら今のうちにプレイしてみて欲しい。

評価:7(要チェック)

おすすめポイント
美しいアニメーションシーン
メリハリがきいた攻防
歌の使い方が良い

気になるポイント
水平移動ボタンに難あり
スコアは時間をかけると伸びるので面倒

アプリDL:
解放少女 (itunes 360円 iPhone/iPad対応)

開発:レベル5(日本)
レビュー時バージョン:1.0
課金:なし

ライター:ゲームキャスト トシ

動画: