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『アナザーエデン 時空を超える猫』レビュー - 街があって、旅があって、ボスで盛り上がる。ガチャゲーの常識を越えた真の王道RPG

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王道RPGとはなんだろうか。
「老舗ゲーム屋が作ればぽちぽちのカードゲームも王道RPGになる」とか、「キャラが重厚だから王道RPG」とか、ソーシャルゲーム時代になってからずいぶんとその幅は広くなってしまった気がする。
しかし、ファミコン時代からゲーム機の王道RPGと言えば、「街があって、世界を旅して、驚きがあって、コツコツ強くなって、ボス戦で大いに盛り上がる」RPGのことだろう。
そんな王道RPGはスマホのガチャゲーでは実現できない……そう思っていた。この『アナザーエデン』が出るまでは。

アナザーエデンをプレイして最初に驚いたのは、フィールドの作りであった。
原始的な過去世界からファンタジックな現代、メカメカしい未来まで、実に様々なフィールドを楽しめる。いろいろな場所を旅している感覚は、古き良きRPGの「旅」そのもの。
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そこに付随するBGMもフィールドの違いを音楽で表現する仕事を成し遂げている。特に現代から未来に移動したときのスケール感の違いは音楽なしにはあり得なかった。
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画面は横スクロール型を採用しており、移動は左右のドラッグ操作でスイスイ移動できる。
また、特定のポイントでは手前や奥に移動することもできる。このとき遠くに見えていた地形がグッと手前に迫る演出が気持ちよく、工夫して作られていることが分かる。
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そして、フィールドにたまり場以上の意味があることはそれ以上に驚きだった。
宝箱を開ければレアな装備素材が出てくるし、隠し部屋を探し当てれば超強力な装備も手に入る。ラスボス戦で最も活躍する伝説の武器だって手に入る。普通のRPGで隠し装備を探すのと同じように、楽しく探索できる。
「ソーシャルゲームなんだから、たいしたイベントはない」なんて思っていると、巨大ボスが出てきて思わぬしっぺ返しを食らうこともある。
プレイしていて初めて巨大モンスターが迫ってきたときは、叫び声が出るほど驚いた。
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▲遠くに見えている巨大ボスが、突然……?

多くの基本無料ゲームで省かれるか、バトルのためのたまり場に過ぎないフィールド。
そこにプレイヤーが足を踏み入れて探索する理由を作り、エンターテイメントを復活させていたのだ。

シナリオだって中盤以降に飛ばしすぎな箇所があるが、普通に楽しめる。
さらに、サブクエストのシナリオはおおむねメインよりも良くできていて(短いスパンで完結するので、メインよりクオリティを上げるのが容易だったのだろう)楽しかった。
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▲アップデートで追加されたサブクエスト“ふたりの騎士と祈りの魔剣”。ラストが胸にきた方も多いだろう。

印象的なボスキャラクターも多く登場して白熱のバトルが繰り広げられるし、展開上も実際に盛り上がる。
なにより、ガチャで強いキャラを手に入れたら終わりではなく、プレイヤーの手でコツコツ育てて、ある程度適正と思える難易度でスムーズにゲームが進むのが嬉しい。
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それを支えるバトル面も出来は良い。
本作はターン制のコマンドバトルだが、いつでも入れ替え可能な隊列システムが戦術性を加えている。
パーティーは最大6人だが前線に出られるのは4名まで。残りのキャラクターは控えに回り、控えキャラは1ターンごとにHPとMPが回復する。
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控えキャラクターと前線を入れ替えるときには行動を消費するが、前線に出たキャラクターは即座に“ヴァリアブルチャント”という支援技を使う。
このヴァリアブルチャントが使い方次第でバカにならない強力さで、大ダメージを受けるボスの全体攻撃も、防御アップスキルと防御アップのヴァリアブルチャントを重ねれば半分以下の被害で乗り切れたりする。
いつ誰が控えに回り、誰が復帰するのか、これがボスバトルでは重要となるわけだ。

さらに、隊列はバトル中にゲージを貯めて使用する超連携技、“アナザーフォース”の成果すら変える。
アナザーフォース使用中は一定時間スキルが使い放題なのだが、隊列順に行動するので並び方しだいでスキル使用の順番が変わり、効率が大きく変わる。
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▲アナザーフォース中は回復もでき、100%までゲージを貯めていればメンバー次第で締め技も出る。

要するに『アナザーエデン』は街があって、世界を旅して、驚きがあって、コツコツ強くなって、ボス戦で大いに盛り上がるRPGの実現に成功しているのだ。
それも、下手なゲーム機のRPGを超えるほどの満足度で。クリアまで2,900円、クリア後に2,900円、合計で5,800円支払ったが、それ以上の価値はあったと思う。
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▲課金したあとにお礼が出るのはとても好印象だった。

ただ、ガチャゲームゆえの難点は克服し切れていなかった。
普通にプレイしていれば課金アイテムの“クロノスの石”がかなり手に入るので、多くのプレイヤーはそれで問題なくゲームをクリアするだろうが、レア度★3のキャラクターは終盤役に立たないし、★4以上の強い回復役が当たらないと進化素材集めに長い経験値稼ぎを要求される。運次第でゲーム体験が大きく変わってしまうのだ。
ガチャ運が悪くとも全滅時の復活を行えば簡単にクリアはできるが、それはそれで満足感が低い。
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▲★5まで成長する★4キャラを手に入れた!しかし、普通にプレイして★5になることはない……。

また、メインシナリオでは主要キャラクターが自動的に仲間になる仕組みだが、メインキャラクターは皆★3であるため、いつも操作するキャラはガチャキャラなのに、ストーリーはメインキャラクターが進めるチグハグな状況を生み出してしまっている。
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▲ラストまで使用したキャラクターたち。誰一人、メインシナリオに関わらない。

とは言え、基本無料の枠組みでここまで“本格RPG回帰”を成功させたスタッフは素晴らしい仕事をした。
プレイヤーが喜ぶほどのアイテムをフィールドに配置したり、コツコツ強くなって課金しなくても最後まで遊べる(クリア後の超難易度ダンジョンは別として)仕組みを作るには勇気が必要だったことだろう。
しかし、課金要素を強くする誘惑に耐え、圧倒的な壁やPvPで課金を煽られることもなく、過剰な周回や期間限定のイベントに煽られることなく、プレイヤーのペースで好きに遊べるRPGを作り上げた功績はでかい。
「人気シリーズで××のゲームをする」ようなゲームだらけの時代に一石投じる大役をなしたげたと思うし、今後にこのゲームのフォロワーが出現する可能性を考えれば、“ソーシャルゲームの転機を作った歴史的作品”とも言われかねない1作だと思う。

単に基本無料スマホRPGを探しているなら強くお勧めできるし、基本無料を敬遠していた有料ゲームプレイヤーの皆さんにも遊んで欲しい1作である。

評価:8(とても面白い)

課金について
クロノスの石、コンテニューとガチャに使用(課金なしでクリアできるが2,900円のセットは効率が良い)

おすすめポイント
基本無料なのに王道RPGを実現
多彩なフィールドと多様なボス
サブクエストのシナリオが良い

気になるポイント
メインシナリオが後半急ぎ足過ぎる
ガチャゆえの欠点(本文参照)

(バージョン1.5、ゲームキャスト トシ)

アプリリンク:
アナザーエデン 時空を超える猫 (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

動画: