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『償いの時計』レビュー - 後悔はするが反省はしない。人間のクズの贖罪を描くアドベンチャー

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ゲームの世界では、どんな悪人も救われてしまう。終わってみればいい人になっていたりする。
しかし、それでいいのだろうか。
30分程度で遊べるお手軽ゲームながら、いびつなまでのハッピーエンド主義に疑問を投げかけるアドベンチャー『償いの時計』。
PCフリーゲームの中でも強烈に後味の悪いゲームとして知られる本作が、原作に存在しなかったアフターストーリーを補完し、 さらにエグみを加えてやってきた。

償いの時計で過去に遡り、罪を償うアドベンチャーゲームだ。
ゲーム冒頭で愛する人を殺してしまい、失意のままに歩く男。彼がこのゲームの主人公である。
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このままどうやって生きていくのか。呆然とする主人公に怪しげな商人が声をかける。
時間を巻き戻すという「償いの時計」を使えば、過ちを償えるのだという。
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怪しみつつも時計を受け取る主人公だが、時計に触れた瞬間にその疑念は消える。
主人公は人に見えない幽霊となり、時間を巻き戻せるようになったのだ。
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早速家に戻って「時を巻き戻す」を選択してみると……。
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過去の主人公が、女と向き合っている場面まで時間が巻き戻った。
まずはこの状態で「時を進める」を選んで、事件の概要を確認してみる。
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「怖がる必要はないんだよ。ぼくはただ…愛しているのだから…」
「変態!あなたなんかに愛されたくない!!」
「ぼ、ぼくのことをバカにするなぁ!!」
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……なんてことだ。主人公は予想以上に手のつけられないヤツだった。
主人公は勝手に家に入って女に迫って拒絶され、頭に血が上って殺してしまったのだ。
完全に変質者である。
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しかし、今の主人公は罪を償うために戻ってきた幽霊。
今回はこの結末を変えるのだ。
主人公は直接生き物に触れない。触れるのは、部屋の中で点滅しているいくつかの物体だけである。
例えば、先ほどの状況で男の後ろにあるテレビに触れてから時間を進めると……。
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「ん?」
男の注意がそれて女が脱出に成功する。過去が変わった!
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とは言え、まだまだ男は追ってくる。そのまま放っておけば、またすぐに少し変わった形で悲劇がやってくる。
次々と物体に干渉し、結末を変えるアドベンチャーとなっている。
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ゲーム部分の説明は以上で終わりだが、ここまでプレイするとゲームの解法以上に気になることが出てくる。
この主人公、殺したことを後悔してはいるが、反省していないのだ。
過去を変え、形を変えて女に拒絶されては「なぜだ!」と憤る。
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「絶対に君を救ってみせる!」と言った横で、女の家のトイレに入り「君の家のトイレに入れるなんてラッキー」と喜ぶ。
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このような男が、過去を変えて幸せになれるのか?
そして、本当の意味で償うことができるのか!?
普通のゲームであれば、悪役だろうが「更正して、償って、幸せに」となるのだろうが、このゲームの空気はどうも違う。
償うと言うことがどんなことなのか、後味悪くもプレイヤーに知らせる独特のシナリオを見られるはずだ。
PC版に存在した通常のゲームに加え、さらに味わい深い後日譚も見られるので、昔遊んだことのあるプレイヤーもぜひ遊んで欲しい。

なお、本作はプレイに対して課金の制限はなく、ゲーム終了後に作者に募金できる仕組みとなっている。
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エンド画面の右上で募金できるので、ゲームが気に入ったら作者さんにおごってあげて欲しい。

評価:6(面白い)

課金について
ゲーム終了後に作者に寄付できる(120円~480円まで)

おすすめポイント
30分で終わるお手軽さ
人間の生き方を考えるシナリオ

気になるポイント
後味は悪い

(バージョン1.0.2、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
償いの時計 (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)