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『ブラックローズサスペクツ』レビュー - エヴァの貞本義行、アナザーコードの鈴木理香に手を組ませ、作品性は放棄した奇怪なRPG

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『Black Rose Suspects(ブラックローズサスペクツ)』は、本格サスペンスRPGの触れ込みで大々的に宣伝されたゲームだ。
サスペンスゲームの『アナザーコード』の鈴木理香さんが企画・原案を担当し、『新世紀エヴァンゲリオン』の貞本義行さんがメインキャラクターのデザインを担当するというのだから、その宣伝文句にもうなずける。

実際、異形のキメラと戦いながら殺人事件を追う主人公はハードな背景を抱えているように見えたし、ゲームの世界観も近年主流の萌え系とは一線を画しており、ゲームキャストとしても非常に期待していた。
だが、リリースされたものは宣伝文句を台無しにするちぐはぐなゲームであった。
ゲーム開始時のブラックローズサスペクツには、ワクワクが詰まっている。
なんせ、会話シーンでは貞本キャラクターがLIVE2Dで動くし、声優陣も豪華。音楽もジャズ調の音楽もシックな世界観にマッチしている。
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何よりキャラクターが渋い。期待通り渋い。
年を重ねたキャラクターは渋く、若い男は血気盛んで、女性は美しく…そうそう、これ、こんな世界を待っていた!
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そして、バトルを見ても少し目を引くものがある。
リアル系の頭身で描かれるキャラクターは魅力的で、やはりゲームの空気に合っているのだ。
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キャラクターは小さいが、ゲーム世界の町並みなどが描写される演出は世界観重視でまた良い。
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マスコット人気など欠片も狙っていないキメラの醜悪な姿もまた、期待を増幅する。
昭和の怪人風のボスキャラも良い。ペルソナ風だが異なる世界観を目指したことがわかるし、実際差別化されていると言えるだろう。
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バトルシステムこそ『Soul Clash』系のオート攻撃+スキル使用タイミング選択のオーソドックスなものだが、このゲームの本質はサスペンス。
そうであれば、雰囲気が統一されていれば十分だ。
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▲打ち上げ技からの連携、ダウン技からの連携などもある。

だが、期待させてオープニングアニメが流れる場面から不安が始まる。全体的に微妙にクオリティが低い…アクションが、動きが安っぽい。
続く会話シーンも、よく見ると無駄にキャラクターが動くので落ち着きなく見えてしまう。
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▲特にモブキャラの動きが安っぽくて気になる。

さらに、豪華声優陣がキャラクターの声を当ているのは良いが、その使いどころが悪い。
本作はフルボイスではなく、会話に少し雰囲気を添えるボイスを入れる形式となっている。
例えば呼びかけるときは「おい」とか、危機を脱したら「危なかった」とか。テキストとは異なるフレーバーボイスが入る。
これがテキストと合っていない。せっかくのいい声がゲームの邪魔になっているのだ。
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シナリオに関しても、次々とキャラクターが出てくるが面白い展開にならない。
物語においてキャストと舞台が整うまでは準備期間で、退屈になりがちだ。1章分通して第2章まで行けば先が気になりはするが、間にちょくちょくバトルを挟んで間延びするし、そもそも同じようにシナリオを売りにしている『Fate / Grand Order』と比べると、シナリオ濃度を20%ぐらいに薄めたような展開だ。シナリオで押すには厳しさがある。

さらに、シナリオを邪魔するのは展開の遅さだけではない。ゲーム内容とシナリオに関連性がなく、プレイヤーと物語が一体化できない問題もある。
主人公は弟がかかわった殺人事件を単身で追っているはずなのに、ゲームはそれと関係のない方向に拡張され、あさっての方向に行ってしまうのだ。
なんと、プレイヤーのランクアップと共に突然「レイドボス」、「アリーナ」と「タワー」がオープンし、そこで遊ぶことを勧められるのだ。
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他のプレイヤーとアリーナで戦う理由はなぜなのか、そうかと思えば協力して巨大ボスと戦っているのはなぜなのか。
今まで現代風の街中で戦っていたはずだが、突然に出現した世紀末的な廃墟はどこなのか。
一切の説明はない。ただ、システムとして開放される。
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▲ここはどこですか?

このあたりで、いやが上にもプレイヤーは気づく。
このゲームはシナリオ目当ての人を集め、慣れてきたところで対戦や協力バトルにハマらせて課金を促すようにつくられている。
根本はアリーナやレイドボスとの戦いでひたすらチーム強化する中国系RPGの仕組みが存在していて、売り文句のサスペンスRPGなど、単なる上物でしかないのだ。

育成RPG部分はそこそこ遊べる(バランスやテンポが悪くゲーム説明が不足しているものの、やるほどに強くなる構造はハマる)ので、なんとなく居つくプレイヤーもいることはいるだろう。
だが、ほんとうに雑にシナリオを放り込んだせいで、退屈な第1章がさらに間延びして殺されかけている。ゲームに対しても、シナリオを追っていたプレイヤーは展開に違和感を感じるつくりで、良い影響は及ぼしていない。
異なるゲームが奇妙に合成され、ちょうど本作の敵役であるキメラのようになっている。
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キャラや演出、ストーリーが統一されているので、あと一押しでまとめられるようにも見えるが…どうした理由か、本作はまとめることを放棄してしまったように見える。
ブラックローズサスペクツは、『ペルソナ』的かつ少し違うものを目指して作られたように見える「なにか」で終わっている。
作品性を押し出して宣伝していたゲームだけに、1つの作品であることを放棄した内容は残念に思う。
できれば、シナリオ配分やゲーム内の説明を再構成してまとめ直してほしいが…リリース後では厳しいか。

評価:6(面白い)

課金について
ガチャ、スタミナ、パワーアップアイテムセットなど。課金しなくても遊べるが、課金すると明らかに有利

おすすめポイント
テンポよくキャラや資源が手に入るパワーアップバランス
渋くかっこいいキャラクターたち
声優陣は豪華

気になるポイント
世界観とゲームシステムの不一致
ロードや通信の多い画面遷移
やたら時間がかかるアリーナ、全然倒せないレイドボス
通して読めば楽しめるが、ひたすら薄いストーリー展開

(バージョン1.00.0000、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
Black Rose Suspects (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)