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『終わらない夕暮れに消えた君』レビュー - 懐かしさの演出がプレイヤーの心を開き、王道で感動させるアドベンチャー

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彼女は最後にそう言った』に続くSYUPRO-DXの最新作が『終わらない夕暮れに消えた君』が登場した。
クリアまではおよそ2時間。
短い時間の中で孤島の伝承にまつわる不思議な事件と青春物語が展開され、最後に少し感動するいつもの展開はさすが。
今回も横田純さんのシナリオが冴え、入間川幸成さんの手がける音楽が場を盛り上げる安定の作品に仕上がっていた。

10年前のお祭の日、かくれんぼで遊んでいた友達が、ひとりだけ、いつまで経っても見つからなかった。
次の日も、その次の日も、その友達は見つからないまま…そんな記憶も遠い昔となった現在。
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久々に島に集まった仲間たちは、タイムカプセルを掘り起こすことになった。しかし、そこにあったのは差出人不明の手紙だけ。

「10年前の つづきをしよう」

10年前、ぼくは『鬼』だった。10年前の続きならば、ぼくは再び探さなければいけない。
ぼくの…10年越しのかくれんぼが始まった。
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本作はそんな導入から始まるRPG風アドベンチャーだ。
画面をタッチすれば主人公が移動し、タッチした位置を調べたり人に話しかけてくれる。移動速度も速く、とても快適。
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重要な情報をしゃべる人物は「!」マークが表示されていてわかりやすいし、会話でも重要な内容は「ヒント」に記録されるので忘れることもない。
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次に行くべき場所は会話の中で示されるから謎解きもなく、全体マップがあるので迷うこともない。
まさに至れり尽くせりのシステムを用意した上で、本作は少年たちの青臭くも奇妙な物語を語り続ける。
正直に言えばストーリーは少し弱いのだが、物語をこぼさずに伝えるお膳立てがきっちりしており、それを補っている。

物語の本題に入る前、プレイヤーには田舎祭りをねり歩く時間が与えられる。ここがまず良い。
懐かしい空気の世界をさまようことで郷愁を誘い(少し粗めのドット絵RPGは、とくに一定世代の懐かしさを誘う)、プレイヤーの心は『終わらない夕暮れに消えた君』の世界に溶け込める。
王道の物語も、プレイヤーの心を開いてから語ることで素直に入ってくる。
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また、要所ではプレイヤーに確認を行うため、物語のキーになる知識を取りこぼさずに感動できる。
感動の取りこぼしがない配慮も良い。
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そして、そのお膳立ての上でプレイ時間と障害の設計もよい案配だ。
多くの場合、物語とゲーム部分の面白さは相反する。
難しい謎を解いている間にストーリーが頭から抜けていってしまうこともあるし、ゲーム部分が面白いと(幸か不幸か)そちらに集中してやっぱりストーリーを忘れてしまう。
忘れなくても、深刻な場面の合間に「長時間楽しく経験値稼ぎ」なんかしてしまい、物語の連続性が失われる。
本作では障害を作らずに2時間程度で物語を読み終え、物語を連続して楽しめるよう設計されているのだ。

目立った欠点はないが、強いて言えば前作の『彼女は最後にそう言った』に近すぎるマンネリ感を感じる程度だろうか。
それでもここまでお膳立てされれば、やっぱり素直に「良かった」と思えてしまう。子供の頃の素直さを思い出す、さわやかなゲームとなっている。
誰でも素直に楽しめる物語を探しているなら、本作はお勧めだ。

評価:6(面白い)


課金について

なし

おすすめポイント
短時間でノベルを読むように楽しめる
音楽が効果的に使われる(サントラもある)

気になるポイント
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(バージョン1.0.1、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
終わらない夕暮れに消えた君 (itunes 無料 iPhone/iPad対応 / GooglePlay)

サウンドトラック:
終わらない夕暮れに消えた君(itunes / GooglePlay)