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『Mashroom 11』レビュー - 未知の生命体を動かす、未体験の面白さ

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『Mashroom 11』と出会ったのは、およそ1年前。2016年のトーキョーゲームショー(TGS)のインディーゲームコーナーだった。
緑色の粘菌を粘土のように変形させて進むアクションアドベンチャーなのだが、あまりに操作が新鮮で、夢中になって遊んでしまい、気がづくと私はブースにいる作者に話しかけていた。

「このゲームはPC版でも面白いけど、タッチ操作の方が快適でより楽しくなりそうですね」
「私もそう思う。iOS版も作っているけど、そうなると思うよ。出たら記事にしてね(笑)」
「絶対、記事にします!」

そして、安請け合いした結果、いまこの記事を書いているわけだ。

本作を最初見たとき、「また、流体パズルか」と飽き飽きしていた。液体を操作する流体パズルがスマホで流行った過去があり、そのときで流体パズルはおなかいっぱいだったのだ…が、遊んでみて驚いた。これまで遊んでいた流体パズルと、Mashroom 11はまったく異なる操作のゲームだったからだ。
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粘菌の操作方法は、十字キーでもポイントクリックでもなかった。
プレイヤーがマウスを動かして選択した場所に円が出現し、その円に触れた粘菌は消滅する。
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▲円に触れた粘菌は消える。

しかし、消滅した量と同等の菌が別の部分から再生する。これを利用して菌を動かすのだ。
たとえば粘菌の右部分を消し続ければ、左側に次々と再生していき、結果として左側に粘菌が動いていく。
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▲上の画面から右側をさらに消し、左に再生を続けて移動した。

その操作感は流体ではなく、柔らかな粘土をこねているような感覚だった。粘土をぎゅっと握ると、圧力で指からこぼれていくあの感じ。
それでいていちど手を離すと粘菌は個体となり、簡単には形を変えない。この仕組みを利用して壊れたエレベーターの隙間から入り込んで、粘菌の重みで落とすようなこともできた。
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粘菌を真ん中から真っ二つにして分割し、片方はスイッチを固定し、残った片方で移動するような独創的な仕掛けも楽しめた。
この特性、操作、それを利用したパズル。どれもが新鮮で面白かった。
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あまりに面白かったので、海外インディーゲームを日本語にして輸入するコーラスワールドワイドさんのブースに乗り込んで、
「このゲームスゴく良いし、iOSで日本語対応して日本人にやらせましょうよ!」
と、熱く語ってしまったほどである。結局、英語版のまま独力でリリースされたのだが(その節は、すみませんでした)…。

話はそれたが、その興奮のまま冒頭に書いたように記事を書く約束をし、1番面白くなるであろうスマホ版が出るまで私はプレイを待っていた。
だが、時間と共に不安がやってくる。体験部分は新鮮で面白かったが、果たしてその新鮮さがゲーム後半まで続くのだろうか。
そもそも、本当にタッチパネルで面白くなるのだろうか。
記事を書くことを軽々と約束しすぎたかと後悔しつつも2017年3月9日(木)、ついにiOS版の『Mashroom 11』はリリースされたのだった。

結論から言えば、その心配は杞憂だった。実際に遊んでみると本当にPC版を超える作品に仕上がっていたし、エンディングまで飽きることなく遊び続けられてしまったのだ。
まず、タッチパネルはマウスよりも遙かに遊びやすかった。「ゲームに向かない」と言われることの多いタッチパネルだが、こと特定の場所をおおざっぱに指し示す操作に関しては他のデバイスに負けない。
「特定の場所を指すだけ操作」のMashroom 11は、PC版より快適に遊べた。
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流体と個体を組み合わせた粘菌の性質は、他の物理パズルにない新鮮な謎を気を与えてくれ続けた。粘菌の形を変えて歯車のパーツにしたり、急速に回る毒細胞を消し去ったりと、他のゲームでお馴染みの仕掛けでも粘菌の操作が特殊なためどれも新鮮に感じられた。
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▲粘菌が歯車に!

厳しいパズルの後には、気持ちよく通れる細い通路が用意されており、謎と気持ちよさのメリハリもあった。
奇妙なボスのコアを取り込む(粘菌は、弱い生物を補食して食べられる)ボス戦はパズル要素があるのもさることながら、弱いが無限に再生する粘菌でボスに何度も挑むのは楽しかった。
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さらに、スマホ版は独自要素としてマルチタッチに対応も良かった。PC版はマウスで1箇所を消し続けるだけだったが、スマホ版は複数の指で粘菌を消せるのだ。
分割して粘菌を操作するような難所も、2人で操作すると楽だったりする。1人でも両手で粘土をこねるような体験は面白かった。
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期待して待ち続けてよかった。それがゲームをクリアした今の感想だ。
目新しい特性を持つゲームは、登場したときだけ許される魔法の力を持つ。それは、「誰も慣れていない」ということだ。
初心者でも熟練のゲーマーでも、目新しい同じように操作に苦戦し、上達を喜び、同じように新鮮にゲームを楽しめる。
つまり、Mashroom 11はステレオタイプの物理パズルに既存のゲームに飽きたプレイヤーにも、たまたま面白いゲームを探しているだけのプレイヤーにも、平等に新鮮な楽しさを提供してくれる。
全7章のステージは、早ければ2.5時間程度でクリアできるが、最初から遊び直すと驚くほど上達した操作でスラスラとゲームが進み、また楽しい。 

人間が存在しない廃墟を進むことについて、もう少し説明が欲しいとは思ったが気になったのはその程度。
「これぞ、インディーゲーム!」と言える、新しさのある小粒な良作に仕上がっている。
PC版が1,480円で販売されているなかで、iOS版は操作が快適になって600円。とてもお安く提供されているので、ぜひ遊んで欲しい。

評価:8(かなり面白い)

課金について
なし

おすすめポイント
新鮮な操作とそれを利用した仕掛け
PCよりも快適なタッチ操作、マルチタッチ対応

気になるポイント
背景についてもう少し説明が欲しかった

(バージョン1.1.11、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
Mushroom 11 (itunes 600円 iPhone/iPad対応 / Steam)