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『Edo Superstar』レビュー - 浮世絵風に描かれた動物が戦う格闘アクション。日本好きの外国人が作ってしまったこだわりの1作

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日本の伝統表現である浮世絵の技法をゲームで使用し、擬人化された動物たちが戦うイカしたバトルアクションが登場した。その名は『Edo Superstar』。
制作者は日本人…ではなく、日本のゲームが好きすぎて日本にわたり、日本文化を学んだアメリカ人ジェド・ヘンリーさんと、その仲間たち。
なぜ、外国人が日本の浮世絵でゲームを作ったのか…その背景には、壮大な日本愛があった。

日本文化が好きすぎて日本ゲームのを学んだジェドさんだが、あるとき「浮世絵」を知り、その素晴らしさに心を打たれて、何かできないか考え始めた。
素晴らしい浮世絵を作って、売ってやるのだ。
そこで思いついたのが、浮世絵技法で大好きなゲームを表現することだった。
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▲FF6風

そして、イラストレーターであるジェドさんがデザインし、日本で浮世絵を描く職人デーブ・ブルさんが浮世絵化する「浮世絵ヒーローズ」シリーズが始まり、なんと収益化に成功したのだ。
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▲イラスト名「君に決めた!」

浮世絵ヒーローズのページには下記のように語られている。
私たちの目標は、この芸術に、その古い伝統を維持しつつ、現代的な魅力を与えることにより、再び活力を注入することです。(中略)手短に言うと、私たちが愛する日本のゲームは、まさに、古代の、不朽の文化の新しい章なのです。
Ukiyo-e Heroesより
ゲームが求められている今の日本で、大衆文化を描く浮世絵がゲームをモチーフにするのは当然のこと。それが当たったのだ。
そして、成功を収めたジェドさんの次の目標は、浮世絵と大好きなゲームの融合だった。
2013年、ジェドさんは自身が描いた浮世絵キャラクターが戦うゲームの構想を明かし、開発資金をクラウドファンディングで募集した。
浮世絵という珍しいビジュアルのゲームは注目され、資金調達は成功し…その成果物が、今回紹介する『Edo Superstar』というわけだ。
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記事を書くために情報を集めているなかで、日本の浮世絵文化に貢献し、浮世絵の新しい地平を開拓したいというジェドさんの熱い思いを知り、日本人として心に響くものがあった。
そして、そんなゲームの内容は…惜しい。だが、浮世絵の良さを広める第一歩としては十分頑張ったと言えるだろう。

まず、なによりも売りと言えるグラフィックについては十分良かった。浮世絵風の線と色使いは、やはりユニークで魅力的だ。
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和風の背景もマッチしており、魅力的な世界観を作り出している。
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▲銭湯での戦いでは局部に修正が…(笑)

ゲームとしては猿の主人公が悪と戦いながら江戸を目指す横スクロールのバトルアクションで、少し格闘ゲームテイストが入ったアクションを特徴としている。
画面には奥行きがなく、主人公の移動はジャンプと左右の移動のみ。画面を進むと敵が出現し、主人公の周囲をタッチすると上段・下段の攻撃が繰り出される。
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画面長押しで防御もできるが、最も効果的な防御は敵の攻撃の隙を突くことだ。
敵が攻撃するときに黄色い輪っかが見えることがある。その輪っかをタッチすると…。
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敵が気絶して、大技をたたき込めるのだ。
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大技は通常の10倍以上のダメージをたたき出すだけでなく、演出も爽快。さらに、敵が複数いれば巻き込んで集団にダメージを与えることもできる。これを的確に決めてスカッと敵を倒せると、最高に気持ちいい。
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▲爽快。

さらにさらに、敵を攻撃すると必殺技ゲージが貯まり、超必殺技を使うこともできる。
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全体として演出は小気味よく、アクションとしては合格点以上。
転倒せずに攻撃し続けるほどスコアが増え、レベルアップが早くなるシステムもいい感じにマッチしていて、上手に攻撃して爽快にクリアしたい欲をそそる。
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が、このゲーム唯一にして最大の欠点がそんな美点を覆い隠してしまう。操作性と細部の調整ができていないのだ。
主人公の周囲をタッチして通常攻撃を繰り出すので、敵が近くにいるときは敵の体を指でタッチしてしまい、攻撃動作が見えなくなってしまう。
それでいて、少し敵から離れた位置をタッチすると移動してしまうのでストレスがたまる。
また黄色い円が出ている時間も短く、隙を突くのはとても難しい。ほとんどのプレイヤーは、序盤で投げ出してしまうだろう。実際、筆者もそうであった。

だが、ジェドさんの日本文化への愛に心を打たれるモノがあったし、『Edo Superstar』を期待作として紹介した手前もあり、筆者は必死にプレイして先へ進んだ。
必死にプレイし続けて、死んで、またプレイして…気づくと(海ステージあたりだろうか)から猿を思い通りに動かせるようになっていた。
すると、新しい世界が開けた。このゲーム、面白いじゃないか!

最初に書いたとおり、演出が爽快なのもある。だが、それ以上に先に進むほど世界観が魅力的になっていく。
浮世絵のモチーフとしても多い(主にエロ)のタコサムライはいい感じに動くし…。
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ステージラストには鎧武者から巨大蟹、果てはロボットまで個性豊かなボスが待つ。
ボス敵の倒し方には手順があり、古典的なアクションゲームのように攻略方法を学ぶ懐かしい楽しさがあった。
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ステージ中の隠し通路を探すなんて楽しみもあるし、さらに先に進んで大阪ステージでは敵キャラクターも犬猫などになりかわいさもアップ。
隠し要素で各ステージに出現するニンジャを倒す遊びもある。
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操作性さえ克服すれば、演出爽快・仕掛けは豊富・世界観は良いと3拍子揃ったゲームになることがわかったのだ。
ただ、おそらく誰も操作性を(筆者も完璧ではない)克服できないだけで。惜しい。実に惜しい。
良い素養があるが、ゲームキャストとしてはギリギリで評価5(価格通り、浮世絵世界は240円で見るに値する)とするしかないのが残念だ。
アップデートで操作性を改善してくれれば、一足飛びにおすすめゲームになると思うので、今後の動きに期待したい。

評価:5(楽しめる)

おすすめポイント
浮世絵風グラフィック
多彩なボスと爽快な演出

気になるポイント
操作性が致命的に悪い

課金
スター(装備の購入、ゲームプレイで普通に手に入る)

(バージョン1.0、ゲームキャストトシ)

アプリリンク:
Edo Superstar (itunes 240円 )

動画: