隻腕の少女が、失われた家族を求めて悪夢のような世界を旅するRPG、『Severed』が、日本語に対応でスマホに登場した。
グロテスクな世界観、不安をかき立てる音楽、絶望を伴う不穏なストーリーはプレイヤーを捕らえて放さない。
すでに海外のPS Vitaで人気を博したゲームだが、もともとはスマホ向けに開発されていたゲームなので、タッチでの操作性も良好。
iOSのゲーマーなら、手を出してみるべきゲームである。
本作は、隻腕の少女となって異世界を探索し、家族と失われた片腕を探すアクションRPGである。
マップは3Dを採用していて、タッチ操作で1マスずつ区切られた区画を移動していく方式をとっている。
3Dフィールドは演出のために使われており、構造はシンプル。
また、いつでも地図が見られるので迷うことはない。
誰でも余計な事は気にせずに異世界を見て回れる設計だ。
▲常に目的も示されていて、余計な道もないのでテンポ良く進む。
『Severed』の世界は薄気味悪く、不安をかき立てるBGMもマッチしていて悪夢の世界そのもの。
だが、奇妙なことにただ気持ち悪いだけでなく、現実にあり得ない世界を見る面白さも同時に存在する。それを、最大限に楽しませようとする仕組みといえるだろう。
もちろん、異世界には行く手を阻むモンスターもいる。
モンスターとのバトルでは、プレイヤーの指を剣に見立てたアクションで、スワイプした方向に剣戟が走って敵を攻撃する。
モンスターが攻撃してきたときは、モンスターの攻撃方向と反対側にスワイプすることで、切り払って防御できる。
早い話が、『Infinity Blade』のようなスワイプアクションだ。
▲モンスターの攻撃時は、画面下のアイコンが赤く光る。
なお、バトルは序盤こそ少し単調だが、ゲームの進行とともに複数の敵とのバトル、魔法などの要素が登場し、やり応えが出てくる。
バトルで負けても直前の状態に戻されるだけでペナルティはないので、ストレスを感じることはあまりない。
さらに、ゲーム中いつでもイージーモードに切り替えられるので、ゲームが得意でなくても遊べる親切設計となっている。
モンスターを連続攻撃して「フォーカスゲージ」を貯めると、モンスターの体力をゼロにしたときフィニッシュモードに突入する。
フィニッシュモードでは、モンスターの四肢にカットの目印が入り、制限時間内にこれをなぞることで四肢を切断できる。
切断した四肢は、バトル後に拾い集め少女の成長に使用する。
モンスターの四肢を消費すると、攻撃力や防御力、魔法能力などを自由に選んで成長させられる。
この成長システムのため、バトルを完璧にこなす楽しみもある。
▲この成長システム自体が楽しめるのはもちろんだが、なぜ、少女がモンスターの四肢で成長するのかプレイ中興味が絶えなかった。
AppStoreの説明を見ると、このゲームはアクションのようにも見えるが、実際にプレイしてみると異世界を探索し、少女の行く末を見るアドベンチャーの要素が強い。
主人公の少女については多くが語られず、ただ家族がいて、平和に暮らしていたであろうことしか分からない。
そして、数少ない登場人物が断片的に世界の情報を提供し、プレイヤーは想像力をかき立てる。
情報が少ないことが良い方向に作用し、プレイヤーがあれこれ類推する余地が生まれている。
▲モンスターの肉を食らって生活する老婆。少女の行く末を知るかのような発言を繰り返す
何よりも、失った腕を取り戻し、家族とともに元の世界に帰る目的と裏腹に、この世界に馴染むたび異形と化していく少女の姿は強烈だ。
奇っ怪な世界に魅入られるだけでなく、絶望を臭わせ続けるストーリーからも目が離せない。
ゲーム進行はとてもテンポが良く、不安な気持ちを抱きつつも不気味な世界を探索するのは興味深く、飽きることはなかった。
およそ5時間程度のゲームは濃密で、飽きる直前の最高の状態で終了する。
深いアクションを期待すると少し肩すかしを食らうかもしれないが、アクションもあるアドベンチャーRPGとして見るならば、本作はApp Storeでも最高峰の1作である。
7月31日現在、本作はリリースセールで720円（PS Vita版が15ドルだったので、定価は1,500円程度と予想される）提供されている。
多少の気持ち悪さも面白さのうち。見た目が生理的に受け付けないのでなければ、絶対に試してもらいたい1作だ。
評価：9（買うべき）
課金:
なし
おすすめポイント
奇っ怪な世界と不安をかき立てるBGM（ヘッドホン推奨） 終盤まで少しずつ要素が増えるバトル 余計な要素がなくてプレイしやすく、テンポが良い 少女の行く末から目が離せない気になるポイント
序盤は少し退屈（バージョン1.0、ゲームキャストトシ）
アプリリンク：
Severed (itunes 720円 iPhone/iPad対応)
