1度見たあと、もう1度読み返したくなる小説が好きだ。
ショートアドベンチャー『The Abyss』も、そういった作品の1つである。
このゲームのは2つの顔がある。
1つ目は、女性の人生を、静かなサウンドとともに抽象的に表現したアドベンチャーの顔。独特の表現に引き込まれるはずだ。
もう1つは、プレイヤーの人生を映し出す鏡。
2周目では、プレイヤーが歩んできた人生によって見えるものが変わる。30を過ぎたオッサンやオバサンにプレイして欲しい1作である。
ゲームが始まると、大きな顔が表示され……。
左目が重力によって落下しはじめる。この紫のボールは主人公だが、プレイヤーは一切干渉できない。
ただ、明るいピンク色のパーツはタッチすると動かせることがある。
そのまま、ボールは転がってゆく。
▲右の奇妙なマネキンが印象的だ。
そのまま、ベビーベッドに転がり落ち……。
普通のベッドへ。
多くのシーンでは見ているだけで進むが、不思議な映像と音楽が織りなす世界の前に、退屈は一切しない。
ときにブランコで揺られ、
巨大な顔の間を通りぬけ、不思議な空間を通りぬけ、人生は進みつづける。
1プレイは10分程度。
最初の1プレイは、「ああ、これは他人の人生なんだ」と理解する程度で終わった。
そして、大きく抽象化された映像から、より深く人生を読み取りたくなり、もう1回プレイした。静かな場所で2回遊びたくなる、魅力的な作品だ。
そして、面白いのは、2周目をプレイした時に読み取るメッセージが、プレイヤーによって違うところだろう。
私が「辛そう」と感じた表現を、他のプレイヤーは「楽しそう」と感じることもあり、ゲームの表現の奥深さに感心してしまった。
プレイヤーの人生経験によって、見えるものが変わる。
これが『The Abyss』の面白さだ。
定価は120円だが、2016年1月1日現在はホリデーセールで無料になっている。
ぜひ、端末にダウンロードして、友達や家族の方と楽しみ、感想について話し合ってみて欲しい。
評価：6（面白い、見るべきものがある）
おすすめポイント
抽象的に表現された人生 静かで神秘的な音楽
気になるポイント
10分で終わる課金
なし
（バージョン1 ゲームキャストトシ）
アプリリンク：
The Abyss (itunes 120円 iPhone/iPad対応)
