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ソーシャルゲーム開発現場の現実 - ソシャゲ業界の片隅で2

お久しぶりです。
ゲームキャスト寄稿ライター、アルベルトです。

かなり間が開いてしまいましたが、ソーシャルゲーム(以下、ソシャゲ)開発の真実をお伝えするシリーズ「ソシャゲ業界の片隅で」の第2回をお送りします。
今回はソーシャルゲーム開発者は自分たちのゲームを面白いと思っているのか、プレイヤーをどう思っているのか書いていきます。

前回書いた通り、私はゲーム業界をあきらめたプログラマーでした。
ですが、ソーシャルバブルのおかげでゲーム業界に入れることとなって、舞い上がりつつ訪れた最初の仕事場は…最悪でした。
その職場で「ゲーム業界はこうあるべき」という理想は完全に打ち砕かれたのです。



そんなわけで、自分が経験した順番に合わせて、まずはダメな職場の例を紹介したいと思います。

だいたいにおいて、ダメな職場は給料が良いから就職しただけ、もしくは、興味がないのに部署変えなどでやってきた方で構成されていることが多いですね。
集められるスタッフも「ソーシャルゲームの経験がある」という条件で、似たような考えの方が集まってくるようです。
本当の意味でゲームをプレイしたことがない方も多く、「ゲーム(笑)」とか、内心でゲームをバカにしてるヤツらがゲーム語り、ゲームを作っている現実は悲しかったです。

彼らは自分の作っているものが面白いと思っていないし、作ったものを愛してもいません。
何が面白いのかわからんが、こいつら(ユーザー)はこんなものに金を出すようだ、と思っています。
仕様書に「射幸心を煽って煽りまくろう」という意味の表現を使い、それっぽく社内では話しますが、結局よくわかっておず、売れた他のゲームのまねをしてやっているだけです。

なぜ、彼らは自分たちの作ったものですら愛せないのでしょうか?
私の経験から言うと、彼らは売れた他のゲームのまねをしているだけでなく、元となるものすら作っていないからでしょう。
そういった職場では、すでにあるゲームを改造したり、同業者から買い取ったソースコードや、社内の他部署などで開発されたコードを使用してゲームを開発しています。
皆さんは見た目が少し違うだけのソーシャルゲーム、過去によく見ましたよね?
あれです。

自分達が作っているようで作っていない、なので愛せないし、ゲームがプレイされる理屈もわかっていないのではないかと思っています。
しかし、作品の権利(Intellectual Property、業界内ではIPモノと呼ばれています) の使用権を買い、客を集めてしまえば儲かってしまうのもまた事実で、そんなバブルが彼らの存在を許しています。
現在はさすがに少なくなりつつあると思いますが、まだ存在しているのは間違いありません。

「ユーザーをATMと思っている」
「射幸心を煽ってバカから金を取ろうと思っている」
「バグだらけのゲームをプレイするユーザーを有償デバッガーだと思っている」

など、ソーシャルゲーム嫌いの方が、ソーシャルゲーム業界についてこのように発言されることがありますが、彼らは現実にそう思っていることもあります。

一番衝撃的だったのは、とある漫画のIPを買ったあと、部署内で「IPについて知るために」とその漫画をZipで配布した会社でしょうか。
ソフトウェアという著作物を作っている側が、他の著作物の権利に敬意を払わない。
そんな会社つぶれてしまえばいいのに、と思いましたが、黒字だったようです。


では、良い職場ではどんな職場なのでしょうか?
今から言うことは、絵空事に聞こえるかもしれません。
しかし、実在します。いや、近年どんどん増えているはずですね。

良い職場では、ゲーム制作者がゲームを愛しています。更に自分が作ったゲームを自信を持って面白い、と言っています。

制作者はゲームがなぜそのように動いているのか理解し、ユーザーがより楽しむためにはどうすればいいか常に考えています。
自分が作成したゲームが面白いと自信を持ってるか、「ここまで作りきれば面白くなるはず!」というビジョンがあります。

もしくは、自分が面白いと思っていなくてもユーザーが面白い思うであろうゲームを理論的に考え、作ろうとしています。
ゲーム業界のベテランが「俺はこんなゲームがプレイしたいわけではないが…」と言いながらも、「この一連の流れでプレイヤーがこんな思いを抱き、こう喜ぶはず」と理屈立てて計算している姿は尊敬すら覚えますね。
「全部が遊べなくてはゲームではない」と、課金しなくても楽しく遊べるようにかなり苦心してバランスを取り、自分と折り合いをつけようとしている方もいます。

ゲームをデザインしていなくても、各部分の担当者が、それぞれに自分の仕事に誇りを持っています。

美術担当の方であれば、キャラクターのイラストを描きます。
ゲームが理解できない方もいますが、何万と払わなければ手に入らないキャラクターもいることを自覚し、それに負けないイラストを描こうと努力されています。
それどころか、キャラクターを愛しているのでリリースの際に「いや、このキャラクターはこのタイミングで出したくない!もっと最高のタイミングで出したい」など口を出す方もいるほどです。

サーバー担当は常にユーザーが快適にプレイできるように予算の範囲で頑張りますし、プログラマーも必死です。
バグがあれば、悲しい思いをするユーザーさんがいますからね。

その結果として売上があがると、高い満足感に包まれます。
売上げの他にも、最近ではユーザーのログイン率とか、ユーザーの継続プレイ期間の増加など、いろいろ指標がありますが、そういった数字が高いことが喜びにつながり、さらなるやる気を呼び起こします。

コラム・儲かる=面白いは事実なのか?

ユーザー数の増加、ログイン率など面白さの指標はいろいろとあります。そして、その中の1つとして「売上げが高い」があります。
システムを作った人間や考えた人も課金してくれたら「いいもの作った!」と思う。
イラストレーターはいい絵を描いてみんなが課金してくれたら「いいもの作った!」と思う。
それだけではありませんが、そんな業界です。

では、売上げが高いゲームが面白いのでしょうか?
それは違います。面白いゲームが儲かるわけではありません。
面白くても宣伝していなければ、人目にとまらず売上げは立ちません。
また、『騎士とドラゴン』(このゲームにはまた後で登場してもらう予定です。面白いので、皆さんもやってみてください。)のように面白くて、プレイヤーの目にとまっていてもゲームの仕組みとして儲けづらくなっているものもあります。

さらに言うと、つまらないゲームでも儲かることはあります。
特に昨今はIPやイラスト、ボイス(特にボイスは費用対効果が高いと言われており、採用しているメーカーが増えています)の力が強く、コンテンツ(ユーザーが声優などをネタに盛り上がったりするので、それはそれでコンテンツの強さが面白さと言えなくもないですが)として強ければゲームとして面白くなくても売れることがあります。

ただ、面白くもなく、コンテンツが強くもないゲームは儲かりません。
なので「売れ続けているゲームが面白い」は一面真実でもあると思います。
ただ、売れなくても面白いゲームがあることは絶対忘れてはいけないことですね。

私がシステムエンジニアと呼ばれていた頃は、ソフトウェアを作ってもその売上や評判が出るのは作り始めて1年後、2年後で、ソフトウェアの制作に最後まで関われないことも多かったのですが、ソーシャルゲームでは何か新しいものを作れば、すぐに売上げ・ユーザー評価が確認できます。
今までBtoB(企業同士の取引)で働いていた私としては、BtoC(企業とお客さんが直接取引する。ソシャゲーメーカーとユーザーの関係)の職場の驚きや楽しさ、苦労など経験できて良かったと思っています。
あとは勤務時間が長い傾向にありますが、お金があって残業代がきっちり出る職場が多いので、死んでも屍を拾ってもらえます(笑)

上記のような会社はやはり売上も良く、会社の雰囲気も良いことが多いようです。
なお、中間の職場の話は聞いたことも体験したこともありません。

自分の経験上も、他の方の話を聞いた上でも、一昔前は最初に紹介した悪い職場が多かったように思います。
しかし、ソーシャルゲームのクオリティが上がり、模倣がしづらくなってかなり状況は変わってきました。
また、最近ではソーシャルゲームをプレイして「面白い!」と思った学生が、新社会人として業界に入り、良い職場は増えつつあるようです。
今後も良い職場が増え、ソーシャルゲームのクオリティは上がり続けるのだと思います。

表に出さないことが多いですが、開発会社はこっそりSNSやTwitterをチェックしています。
皆さんも、Twitterなどで面白かったイベント、イマイチだったイベントちゃんと感想を書けば開発者はそれを励みに頑張れます。
好きなゲームがあれば(ソーシャルゲームに限らず)応援してあげてください。

次回は、ゲームの企画や制作までの過程について書いていこうと思います。何回かに分かれるかもしれません。

関連リンク:
あるエンジニアとソーシャルゲームの出会い:ソシャゲ業界の片隅で1

アプリリンク:
騎士とドラゴン (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応)