ゲームキャスト

面白いゲームを探すなら、ここ。

カジュアルゲームバブル崩壊とLINEの猛威:ゲームで振り返るiOSの2012年、特別編

piyo2
パズドラの隆盛と売り切りゲームの敗北。ゲームで振り返るiOSの2012年(前半)パズドラの隆盛と売り切りゲームの敗北。ゲームで振り返るiOSの2012年(後半)とやってきたところで、カジュアルゲームとLINEについても、補足的に加えておきたい。
2012年のカジュアルゲーム市場はどんな変化をたどったのか。
カジュアル方面の知識を保管するため、今回は監修にカジュアルゲーム界の雄RucKyGAMESさんでお送りする。
2012年のカジュアルゲームは『ぴよ盛り』から始まったといってもいいだろう。
piyo3

可愛いキャラクター、お手軽な操作、しかし実際はプレイヤーの腕次第でメキメキ成績が上がるスキル系ゲーム。
2011年に流行った「見た目はショボイけど、ネタで何とかなっている」というタイプとは一線を画すクオリティ。
個人開発者のゲームも、だんだんと平均的なクオリティが上がってきた。
11月にはAndroid版と合わせて400万DLを突破し、ついにはキャラクターグッズ化も。
レビュー:今流行りの超単純系…なだけではなくゲームもGOOD ぴよ盛り

面白革命Capsule+、cocolo-bit、goodia、20Yなど、カジュアルゲーム専門の法人が出現し、クオリティも“趣味の延長”レベルではなくなってきた。

また、2012年のトレンドとして一定以上の質のゲームを、矢継ぎ早にリリースするというものが挙げられる。
一定の間隔でゲームをリリースし続け、ユーザーが飽きるころに自社の次のゲームをおすすめし、ユーザーを抱えて逃さない。
無料ゲームユーザーは無料ゲームだけをひたすらプレイし、飽きたら別の無料ゲームへ渡り歩く層が多いため、その層を取りこぼさないための作戦だ。

この戦略は成功し、2012年前半のカジュアルゲームは AppStore の上位に食い込み続けた。

そして、5月。
『ぐんまのやぼう』リリース。
gunma

「日本をぐんまが統一する!」というコンセプトが話題になってヒットし、多数のメディアで取り上げられるほどに。
ぐんま自体は最高でランキング7位だったが、同時期に1位をとっていた『とどけぇぇえ』もやはりカジュアルゲーム。
もはや、カジュアルゲームがAppStoreの王様かに見えた。

この記事の監修をお願いしたRucKyGAMESさんは、この頃についてこう語っている。

「自分の意識だと、この時期の時点でカジュアルゲームが多すぎて、天の邪鬼な自分としてはもうカジュアル系作りたく無いなぁと。
もし出して外したら恥ずかしいですし!
ぐんまのやぼうは当たると思って出してなかったので、人気出てすごいなぁと思いました。ラッキー!
カジュアル系に関してはまだ数ヶ月はこの状況が続くのかなと思ってました。次に繋がる流れが綺麗だから、ずっと走り続ければ止まることは無いなぁと。
まさかこのあと圧倒的な資本力によって蹂躙されるとは・・・」

RucKyGAMESさんの言ったとおり、このすぐ後に変革の時がきた。
6月。

line
『LINE Birzzle』リリース。
LINEの圧倒的なユーザー数と、スタンプの人気を背景に「DLしたらスタンププレゼント!」というキャンペーンでしばらく1位を堅持。

「これを継続的にゲームを出されたら1位をとれなくなるんじゃないの?」

ソーシャルゲームのリワード広告(ダウンロードと引換にポイントなどを与える報酬付きの広告。報酬があるので強烈にDL数が伸びる)が強力になってきており、1位を取りづらくなってきていた折の話だったので、カジュアルゲーム開発者は当時かなり焦ったのではないだろうか。
しかし、この後しばらくLINEのゲームは沈黙を続け、状況は一旦落ち着く。

9月。
iOS6.0リリース。
この時、LINE Birzzle以上の衝撃がカジュアルゲーム開発者を襲う。
AppStoreのデザイン改定により、今までは検索結果で上位のゲームが一覧で確認できたところを、検索結果1位以外見えづらくなってしまったのだ。
また、アプリのランキング下位も発見されづらくなった。
これによって、「とりあえずトップ10に入ればDL数が伸びる」という状況は終わりを告げる。
baroque0
▲1件目しか見えない検索結果…。

個人的には、多くのアプリに日があたったほうが健全だと思うので、元の仕様に戻して欲しいと思っている。

そして11月末。
ついにLINE Birzzle以来沈黙を守っていたLINEが「LINE GAMES」を展開。
メーカーがリワード広告をかけてもその牙城は崩せず、暴力的なまでに強かった。

pop
▲クマがヤクザに見えやがる…。

ゲームの質も高いものを選んでいたし、LINEの抱えるSNSとの連携もうまく行って『LINE POP』はゲームだけでなく総合でも1週間以上1位を独占。
その後も上位に居座り、次に複数の日にまたがって1位に君臨したアプリもまた『LINEバブル』。
その下を見れば『LINE POP』や『LINEZOOKEEPER』。
どれだけ良質なゲームも、質と関係なく上位を取ることは難しい形になってしまった。
groove (1)
▲この時期に出たゲームはかわいそう。

以上が2012年のカジュアルゲームの動向となる。
記事を書いている1月3日現在もそれは変わっていない。
ここに来て、カジュアルゲームはLINEに王座を奪われた。

では、結局のところLINE以外のカジュアルゲームは利益を生み出せるのか?
それはイエスと言えると思う。
今までがカジュアルゲームのバブルだっただけで、通常営業に戻っただけ。
数を出してインパクトだけを狙って粗製濫造していた時代は終わり、まともな業者だけが残る。

ただし、やはりカジュアルゲーム業者も質を良くすればいいかというとそれだけでは終わらない。
1回DLしてもらったらしばらく遊び続けられる要素が注目されており、ユーザーを逃さずに長期間遊ばせる工夫が必要、とさまざまな成功者が語っている。
例えば、8月にヒットした『マッチに火をつけろ』の作者の記事(GrowingApp)や年末にブレイクした俺の農園と弁当屋』の作者の記事(inside)がこれについて語っている。
match

ただ、これは単純にバブルが弾けたからこの手法に注目が集まっているだけで、先の見える開発者はすでにこれをやっている。
例えば、RucKyGAMESの『とうさん』『ぐんまのやぼう』は明らかに長期遊ばせるつくり。
(ついでに言えば監修をお願いしたのも、今年後半の動きに先立ってこういったカジュアルゲームをリリースしていたからでもある)
tousan
2013年は淘汰の年。
一定以上の質のゲームを出せないところはなくなっていくだろう。
「なんでもいいからひまつぶしたい」という欲求はLINEが満たしてしまう。
携帯の電波だってどんどん地下でも通じるようになっていく。

タイトルと画像で引っ張るだけのゲームはよほどの引きがないと厳しい。
また、それらは余程の話題作りを行わない限り、だんだんとLINEに人を取られていく。
なぜなら、ソーシャルな広がりはそちらのほうが強く、「LINEのあれやろうよ」という人対人の流れに持っていかれるからだ。

話題をつくって人を引っ張り、「この人の、このメーカーのゲームがやりたい」とプレイして思わせられるものだけが、残っていくのではないだろうか。
現在、ユーザーを囲っているだけで変わりが簡単にきくメーカーはだんだんと辛いことになるだろう。
逆にURARA-WORKSやRYUJI KUWAKIさんのように、手堅く良い物を作っているメーカーは少し影響があるぐらいかもしれない。
etc3
▲こねこあっぷとか、他にない感じで面白い。

おそらく、LINEが下手を撃たなければ勢いは今年いっぱいは続く。
そこをしのげる質があるか2013年のカジュアルゲームは試されることになる。

最後に、今回の記事を監修してくれたRucKyGAMESさんの最新作を紹介しておきたい。
彼はゲームは大量にゲームを出すのが流行る前にそれを行い、寿命が長いゲームブームがくる前にそれを行なっていた。
業界最前線で生きる、彼のゲームの中に今年のカジュアルゲーム業界を生き残るヒントがある…かもしれない。



また、先に挙げたメーカー以外で、コレぐらいの品質があれば余裕で生き延びるんじゃないかな、と個人的に思っている人々のリンクや作品をこちらに挙げておくので参考にどうぞ。
URARA-WORKSのゲーム一覧はこちら(itunes)
RYUJI KUWAKIさんのゲーム一覧はこちら(itunes)
GEOMELIX(itunes)


ということで、ゲームで振り返る2012年のおさらいは終了。
なんだかんだで、ソーシャルや普通のゲームは事前の予想通りだったけども、カジュアルゲームは意外な道のりをたどった2012年。
2013年はどんな年になるのだろうか…。

記事が気に入ったらTwitter:@gamecast_blogのフォローRSS登録いただければ幸いです。