ゲーム内容よりリアル感優先!潔すぎる割りきり『Real Boxing』:iPhoneゲーマーな日々30
この世の中には「一番大事なことに力を注いだら、それ以外がてんでダメ」というソフトが存在する。
そういったゲームは一点豪華主義でその部分だけが強烈な個性を主張し、ある種の芸術品的な臭いを発し、マニアを引きつけてやまない。
そう、今日紹介する『Real Boxing』もボクシングの雰囲気を再現することだけに注力した芸術品である。
このゲームは画面タッチでジャブ、左右に払うようにフリックするとフック、下から上にフリックするとアッパーカットを放って攻撃する。
そして、左右にあるブロック・スウェーボタンで回避。
▲画面から臭い出るような男臭さ
で、何よりすごいのがグラフィックや演出のリアル感。
何故かてかてかしているボクサーの体、格闘ゲームよりもはるかに鈍重でリアルなモーション、ブーツの「キュッ、キュッ!」という音。
BGMは観客の声だけ。
まるでボクシングの中継を見ているかのように錯覚するほどのリアリティがある。
殴っていると血しぶきが出るのはちょっと誇張表現だが、鈍いダメージ感がいい。
パンチという格ゲーの「ピシッ!」という小気味いい音が思い出されるが、それはやはり格ゲーのものであってリアルボクシングの音ではないのだ。
▲痛いというか、重そう。
そして、自分がダメージを受けた時の表現がまたいい!
いいパンチを貰うと画面がぼやけ、朦朧とする演出が入る。
ロッキーなどの映画でボロボロになっている状態を思い出させる、良い演出だ。
そして、ダウンとカウント。
すべての演出が、映画やTV中継から想像される「ボクサーってこうなんだろうなぁ」というファンタジーなリアリティを満足させてくれる。
上手くカウンターが決まったときの気持ちよさ、そして朦朧としている相手にラッシュを決めるときなど雰囲気もバッチリ。
試合の合間にはちゃんとラウンドガールが出現する(笑)
しかし、その圧倒的なリアル感に慣れてくると気づく。
「あ、このゲームのゲーム部分は面白くない。」と。
プレイヤーは自分で移動できず(ポジションどりは自動である)、パンチの打点も指定できない。
ボクシングっぽく見える立ち会いを演出するために、すべてを犠牲にしているのだ。
▲端に追い込まれるのもある種の演出…。
クリンチするとHPが回復しすぎるのでプレイヤーは粘りまくることができるし、ダウンして連打で起き上がるとき、下手にマルチタップに対応しているので1本指ではなく4本指で連打するとダウンしてもまず起き上がれる。
敵の攻撃を避けても、体勢次第でカウンターが出ないことが多いし、とにかくゲームとしてプレイヤーが満足できる内容にはなっていないので、理不尽感を強く感じるのだ。
また、試合についても相手より能力が高ければ勝てるし、そうでなければ苦戦するか負けるしかないという「ボクシングRPG」状態である。
▲練習の雰囲気もリアル(内容はミニゲーム)
ゲーム部分はもっと良くすることもできたと思うが、リアル感だけだして後は投げっぱなしである。
「このゲームはリアル感を楽しむためにあり、ゲームが面白いとかはそのために全て投げ打ちました」
という、開発のメッセージが聞こえてくるようだ。
実際、同じシステムでもゲーム部分はもっと面白くできるように思うが、カウンターが思うように決まったり、泥仕合が亡くなったらリアル感もなくなってしまう。
これはこれで潔くてありだとおもう。
450円でボクシングな雰囲気を味わうヴァーチャルリアリティ的な1種の芸術品。
記事執筆時点では350円に値下げしているので、下記の動画をみて(自分のプレイ動画)楽しめそうだったら、雰囲気を味わうために買ってみるのもありだと思う。
ゲームのタネがバレる2試合目ぐらいまではリアルさだけで楽しめるだろう。
アプリリンク:
Real Boxing iPhone/iPadの両方に対応