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レビュー:星葬ドラグニル システムは良いがバランス調整が大変残念なRPG

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タイトル 星葬ドラグニル(iPhone版)
星葬ドラグニル for iPad(iPad版)
ジャンル RPG
価格 無料(フルバージョン1800円)
アプリ内購入 製品版化、経験値・CPを10倍にするアイテム
日本語対応 あり
販売元:SQUARE ENIX | Version:1.0 | GameCenter:実績 | 対応機種:iPhone / iPod touch(iPhone版のみ) / iPad(iPad版のみ) |レビュアー:ドラゴン
評価:2.0(良くはない)
中二病を貫徹した演出。
グラフィックは綺麗で軽快に動く
システムの下地は面白そうなのに、引き伸ばしで作業感が漂うバランス調整
背景の使い回しが多すぎる
ストーリーのご都合主義に入り込めないとツライ
追加課金があるが、多少の課金で無双できるわけではない
iPhoneの代表的RPG、『CHAOSRINGS』シリーズのスクウェア・エニックスからまた完全新作のRPGが発売された。
[悪鬼(ヴァサーゴ)]が人類を襲う世界[イグレーン]で、主人公アランが世界の救世主[竜騎士]になって戦う王道ストーリー。
会話や展開はライトノベルを意識した中二病全開。
キャラクターボイスに水樹奈々、花澤香菜といった人気声優を起用、ゲームの区切りには次回予告演出と最近のアニメをそのままRPG化したような内容になっている。
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▲カットシーンもアニメ調。

ゲームを開始するとメニュー画面からそれっぽい音楽が流れ、ライトノベルなどでよく見られる通常はありえない読み(文字は[不可能]と書いてあるのにセリフでは[ありえない]と読ませるようなアレ)が出てきたりと世界観の作りは徹底的。
ストーリーからバトルまでぶれることなく一貫して中二病なので、このノリが好きなら楽しめるとは思う。
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▲定番の謎の少女。キャラ全体が少し古い感じでなければもう少し引きこまれたかもしれない。

ゲームは細かく別れたダンジョンを探索しながら敵を倒して成長しながら進めていく一般的なRPG。
スクウェア・エニックスお馴染みの触れた場所にどこにでも出てくるバーチャルスティックで移動操作は快適だし、チュートリアルやヘルプも完備されていて操作で詰まることのない親切設計になっている。
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▲全てちゃんとチュートリアルつき。

最近はやりな放置系の要素も取り入れられており、おたすけキャラの[ヴァレット]を探索に出すと、現実時間で10分〜8時間(プレイヤーが時間は指定)経過した後にテセラ(お金)になるアイテムなどを探してきてくれる。
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▲可愛い仕草にきゅんきゅん、探索時間に応じてレベルが上がる。

ゲーム最大の特徴は、ドラゴンを操る[]によるバトルシステム。
これはリアルタイムで進むバトル中に画面下の鎖をスライドさせて手綱を調整し、鎖の締め具合でドラゴンの行動を制御するというもの。
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▲上のゲージを調節するために常に画面をこするので結構忙しい。

鎖ゲージは青ゾーンから始まり、手綱を緩めるほどにドラゴンが素早く強力な攻撃を繰り出すが、右端の赤いゾーンにまで到達してしまうと[暴走]状態となって能力が異常に上がる代わりに主人公にも攻撃を加えてしまう。
ドラゴンに奪われたHPは特殊なアイテムでのみ回復可能となっているので暴走は最後の切り札といったところ。
鎖は何もしなくても右に動いていくほか、自分の攻撃時や敵から攻撃を受けた時に多めに動くので慣れるまでは調節が難しい。
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▲ほとんどのボスは暴走で倒せる強さで、アニメやラノベの暴走した力の再現を感じる。

アビリティをの使用にはモンスターが落とす[CP]が必要で、これは同じアビリティを使い続けて熟練度を上げると消費が半分になる。
重要なのはこの[CP]がドラゴンのアビリティ習得にも必要になること。
アビリティはツリー制のスキルシステムで習得していくが、普通に戦闘していると入手するCPと戦闘に消費するCPが吊り合って収支はトントン。
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CPを稼ぐには[インヴォーク(INVOKE)]システムというコンボシステムを活用する必要がある。
戦闘中、鎖ゲージの特定ゾーンが光り、それが消える前に指定されたゲージの位置で攻撃をするとコンボ数が増加、コンボ数に比例して戦闘後に得られるCPが増加するシステム。
鎖システムによる戦闘に目的を与えており、合わせてアクション要素としてよくできている。
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ただ、このコンボは1回の戦闘で終わりではなく、戦闘どころか章をまたいでも継続するようになっている。
ゲームを通じてモンスターが落とすCPは大きく変わらず、コンボが途切れてしまうとゲームの難易度が上がってしまう。
そのため、ゲームを通じてコンボを途切れないようにする作業になってしまい、戦闘システムは面白くなりそうなのに作業感が漂う。
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▲RATEが15.54…つまり、1戦闘で15.5倍も効率が違う。コンボをとぎらせたら面倒な稼ぎが必要。

また、ボスが強くて普通には勝てない場合は経験値やCP、お金を稼ぐために[ハイパーキューブ]というダンジョンの利用することになるが、この作業感も半端ではない。
ダンジョンはレベルが上がる毎に広く複雑になるが、攻略にかかる時間に比べて報酬が雀の涙。
例えば、下の写真のレベルは武器の金額は10,000テセラを超えているのだが報酬は1,600テセラ。
経験値が手に入るので武器を強くする以上に効果はあるのだが、徒労感が漂う。
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▲キューブ内の宝箱は100テセラが連発されるので寄り道の価値はほぼなし。

そこに止めとばかりに押し寄せて作業感を増幅する最後のポイントが使い回しの目立つ背景。
せっかく新しい場所に行っても背景の色が変更されているだけだったり、ちょっとした小物を配置しただけで基本的にはまったく同じだったりとがっかり感が大きい。
移動スピードが遅めなこともあり、同じ背景を見ている時間が長いので嫌でもこれに気づいてしまう。
同じダンジョンを再び探索するイベントも多いが、特徴的な風景がないのでどのダンジョンも記憶に残らない。
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▲1番最初の建物。あとで何回も同じ風景を見る…。

全く同じ場所の半分を見えなくしたようにしているパターンや、キャラクターの出現位置を少しずらしただけなど苦しい見せ方が目立つ。
また、同じ背景をカメラの角度を変えて何度も使っているので、道が見えづらかったり不自然に見えることも多い。
目的の方向が赤い矢印で示されるのでそれさえ辿っていればクリアできるが、敵とのエンカウント率が高すぎるのと移動が遅いことで移動自体がストレスと感じてしまう。
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ゲームの戦闘システムや、中二病に徹したストーリーは充分に楽しめると思うが、手間ばかりを感じるバランス調整や、焼き直しすぎの背景が足を引っ張っているように感じた。

1つだけ、この作業感を取り除いてくれるのが[追加課金]。
回数制限付きでCPや経験値を10倍にしたり、アビリティ1つを1000円でマスターさせてくれる。
コレを使えばコンボなどをあまり意識しなくても良くなるので、作業感も薄れるしバトルのテンポも確かに良くなる。
1800円でフルバージョンを買わせておいて、さらに課金するとテンポが良くなる課金を突きつけてくるのはどうしたことだろうか。

『CHAOSRINGS』のときに「携帯ゲームなのでテンポを重視して敵とエンカウントしなくなるスイッチをつけました」などと思い切ってテンポを良くして好評を得ていたスクウェア・エニックスのRPGとは思えない。

課金要素は普通にプレイして楽しめるバランスの上で、気持ちよく無双したい人に買いきりで楽しませてあげればいいと思うのだが、元のバランスは微妙、課金しても回数制限があるなど双方にイマイチな内容となっている点もいただけない。
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▲この課金はない…。

システム自体はよくできていてCP関連のバランスの調整と移動速度、ステージをわかりやすくしたりなどするとかなり面白くなるのではないかと思うだけに残念な作品といえる。
今回は評価を2.0とするが、今後のアップデートでバランス調整などがされたら再評価したい。

iPhone版星葬ドラグニルの詳細・DLはこちら(itunes)
iPad版星葬ドラグニル for iPadの詳細・DLはこちら(itunes)

トシの追記
中二病は中二病でも、90年代の中二病テイストを感じた。
なので、設定やノリは自分にはしっくりきたが、重要なシーンがわりとあっさりすすみ、解決方法もほとんどがその場で何とかなりました的な物語にはまったく入り込めない。
ご都合主義もある程度自然な何かやちょっとした伏線があるから納得できるのであって、ためもなにもなくご都合主義を連発されても…。
課金しても歩いてエンカウントしまくるストレスと&コンボが重要なのは変わらないので根本的なストレスは取り除かれず、どの要素も滑っている感じ。
さらに1番テンポよく進んで面白いのは序章から2章のさわりぐらいというのも序章詐欺的な…。
価格を考えると評価2.0で納得。


動画


ちょこっと攻略
普通には見えない宝箱の存在。
実は本作には3種類の宝箱が存在している。
なんとゲーム終盤の脇道にある[トレジャーサーチ1&2]アビリティを習得しないと見えない金と銀の宝箱があるのだ。
完全にこのゲームを攻略しようと思うと、アビリティを取り逃した場合は同じ場所を更にもう1周しなければならないはず。
これは推測だが、序盤のステージでめんどくさい脇道を歩かされた挙句に宝箱がない箇所が多数あったが、この宝箱が設置されていると思われる。
金と銀の宝箱以外ではろくなアイテムが落ちていないので、それを手に入れるまでは脇道に行く価値はあまりない。
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▲見た目でわかりづらいが金の宝箱

ハイパーキューブの上位版[真ハイパーキューブ]。
ステージは半端無く強い敵がでるおまけダンジョンといった感じになっており、解放条件はステージの鍵を宝箱から回収し、さらにアクセスポイントに行かなければならない。
一つ目以外は鍵とアクセスポイントは別々に存在し、全てを探し出すには相当の時間が必要。
ものによっては上記の見えない宝箱から出てくる。
1つ目はナシュカ市の脇道にある。
こんなヘビィなやりこみ要素があるものの、本作には現状、強くてニューゲーム等の2週目要素はない、これもまた残念と言える。