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【個人的な日記】エンジニアカフェの熱気でゲーム新時代がもうきていたことを実感

4月22日、パソナテック主催のやってみよう!アプリ開発トークNightへ行ってきた。

この日の講演者はまたよし れい氏。
C言語すら知らなかった私がたった2か月でiPhoneアプリをリリースするためにやったこと』(Amazon)
の著者。

講演後はアプリ開発者であり、ブログ『和洋風』運営者のするぷさんが加わっての質問コーナーがあった。
お二人ともアプリの開発者・iPhone周りの情報発信者として有名人。

このイベントで最近悩んできた「携帯ゲーム市場はこのまま過当競争になっていいのか?」という問いに一応の答えが出たので日記的に書いておこうと思う。

アプリ開発のヒントがそこかしこに
・有料アプリは埋もれてしまうので、無料でDLしてもらって広告収入を得るのが個人ならばいいのではないか。
・広告収入はクリック単価2円ぐらい。
・アイコンをきっちり作るとアプリのDL数に10倍の差があった。
・(インターフェースの)デザインは重要。
・レビュー対策として、常にレビューを見てアップデートや連絡を繰り返している。
 講演の前にも1つ対応した。
などなど、実際のデータを体験をもとにした情報がいっぱい。
参考になった。


アプリ開発は趣味
二人とも「趣味でアプリを開発する」というスタンス。
質問コーナーでのやり取りを1つ挙げるだけで、それがどれだけ利益からかけ離れているかがわかる。

質問者
「アプリ開発の仕事で儲けたいんですが、どう仕事をうけるのがいいですか?」

matayoshi
またよし氏
「まず、僕は完全に趣味でやっているのでお仕事はお断りしています。
 どうしても楽しんでアプリケーションを開発できないようになってしまう気がするんです。
 一時期と比べてアプリ受託開発の単価は下がっていますし、仕事でやるには短期間で大量に作るしかないと思います。」

するぷ氏
「私は自分がイラッとすることを(アプリを作って)解消して
 『すげぇだろ、使え!』と(itunesに)上げる。
 自分の証というか、そのときの快感。
 プロではない


二人とも趣味でやっている。
自分がアプリを作ること自体がモチベーションになっているわけだ。
実際、この日の話も趣味でアプリを作るために「何をしたか」「どうやって時間を確保したか」という内容が主だった。

またよし氏のアプリiOkinawaは無料。
開発期間を人件費として考えると広告収入だけでは赤字。
また、するぷ氏のアプリは有料だがやはり同様とのこと。

他の質問者からもホットな質問が次々飛び、「趣味で開発したい開発者」が大勢いるということを感じ取れた。
内容もよかったが、この熱気を感じ取れたのがエンジニアカフェイベントでの一番の収穫だった。


熱気を感じた
この日はビジネスアプリに関する人が集まっていたが、転じて趣味でゲームを開発するための環境がどんどん整ってきて、人も集まってきているな、というのが数字や理屈じゃなくて感覚で感じられたのがこの日の収穫だった。
オンラインで情報を集めているよりも、直接会って話した方がなにかを得ることもあるな、と。

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最後においしい食事も出るし、懇親会でいろいろな方とお話しできるし、スタッフの方は美人(写真はまたよし氏のiPadでテンションを上げているスタッフの方)だし…毎回通うことに決めた!
ぜひ、またiPhone系のイベントを。

そして最後に、本の紹介を。
C言語すら知らなかった私がたった2か月でiPhoneアプリをリリースするためにやったこと』(Amazon)
この本はプログラミングの本ではなく、プログラミングに携わるための準備や心構えの本であることが面白い。
「プログラムには情報が必要だ!」→「英語の勉強の仕方を考えて自分はこうだった」
という感じ。
プログラミングの書籍を買う前に本当にゼロから始める人に向けた珍しい本。


なんかもう、個人開発者vs企業は避けられない
そして、そんなイベントの横で考えていたのはやっぱりゲームの話。
任天堂社長の講演が象徴するゲーム業界の力関係(日経新聞)の「Angry Birdsのような安すぎるゲームがゲーム市場を脅かす」という任天堂社長の論調に同意し、「Angry Birdsのようなゲームは誰でも作れる訳ではないのでゲーム業界に悪い影響を及ぼすのではないか」という感じに紹介した。

が、この日に個人開発者の熱気を感じることで自分の中にある変化があった。
元々、ゲームを趣味で開発できるようになってほしいと思っている反面、既存ゲーム会社はダメージを受けないでほしい、という矛盾したスタンスだったのだが、「個人開発者vs企業は避けられないし、それに負ける企業はいらないんだな」という考え方にシフトしてきた。

別に双方戦っている訳ではないが、個人開発者がゲームを出したら企業はそれを上回るものを出さないと行けないという意味で、市場のライバルになるのだ。

そして、2日前のこの記事。

iOSとAndroid向けゲーム、ニンテンドーDSの覇権を脅かす——米Flurry調査
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USの携帯機シェアがiOSとAndroidに脅かされているというもの。
2011年にはiOSとAndroidの合計が50%を越えても不思議ではない。
そして、同時に携帯ゲーム市場の総売上は27億$から24億$へ下がっている。
これはスマートフォンの安価なゲームに押されて3億$も携帯ゲーム機市場が縮小したことを示す。
日本にいると想像できないかもしれないが、USではiPhoneと言えばゲーム機。
年間売り上げトップ10で、日本はビジネス・お役立ちツールが上位を占めるのに対してUSでは10のうち9までがゲームであったことからもそれがわかる。

これを見て「ああ、もう携帯ゲームが安くなっていくのは避けられないんだな」と実感していた。
しかも個人開発者とゲーム会社が同じAppStoreという土俵で競うのも避けられない。
コミックマーケットなどでインディーズゲームをチェックするようにしているのだが、オリジナルかつ500円以下で市販ゲームなみのクオリティのものもあり、こういったものがAppStoreの土俵に上がったとき、さらに値崩れは加速する可能性もある。
DL販売が主流になれば、さらに据え置き機にもその波がくるんだろう。


ゲーム会社の分岐点
ゲームの既得権益であった「高価格」というものは崩れ去り、企業は「安くアイデアゲーム」か「企業ならではのブランドゲーム」「個人では作り得ない豪華ゲーム」で勝負するしかない。

アイデアゲームは見ての通り、ブランドゲームは既存のゲームにブランドをくっつけて売る(バンダイナムコのパックマン系ゲームがいい例だ)、開発費が安いゲーム。
これらについては「世界で2番目に売れているゲームから飛び火した業界再編の予感」   Doodle Jump - 注意:パクりすぎないように!(ゲームビジネスJP)で指摘されているように、アイデアをパクり合ったあげくにゲームが無料に近くなっていってしまう焼き畑農業的な危険がある。

とすると、そのうちインディーズも大作を出す時代がやってくるだろうから、将来も考えると「個人では作れない」「アイデアがあるゲーム」がユーザーにはうれしいかな。
CDの売り上げが落ちてバブリーなことがしづらくなってきた音楽業界のように、「豪華なゲーム」がなくなっていくのは何とも寂しい(そして、その寂しさこそが矛盾したスタンスの源だった)。

企業はやはり個人以上の力を持つものなので、新しい戦略で面白い稼ぎ方のゲームを提案してくれることを期待したい。
多分、この大勢に順応できない会社は5年後につぶれるか大幅縮小している気がする。

ということを思ったという日記。