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AppStoreでゲームを見続けて思ったこと2「日本のAppStoreレビューは宝の山」

AppStoreでゲームを見続けて思ったこと1「アプリ価格=アプリの質+サービス」の続編なので、よければそちらからどうぞ。

AppStoreのレビューは情報の宝庫
前回、AppStoreではブランドが売れ、ブランドを作るにはサービスが必要と書いた。
では実際、見えないサービスをどうやって読み取ればいいのか?
前回意味ありげに引いておいて、結論は非常に単純である。
AppStoreのレビューから読み取れば良い。
「良い点は○○で悪い点は××…」
などと詳しく書いてくれているレビューはもちろんのこと、
「簡単すぎます」
「3日前に定価で買ったのに値下げしたから評価下げます」
一見、何気なく書いているレビューでも「ゲームの難易度がこのユーザーには低すぎた」「ユーザーが納得しない形で値下げをしてしまった」など情報は手に入る。
コーエーテクモの看板シリーズの1つ、信長の野望を例に紹介しよう。
(賛否両論でレビューが荒れているとされたゲームなのであえて選択した)


信長の野望全国版
20110105kiji01
1・全国版の移植としてよく出来ている
2・元のゲームを持っているが、それよりひどい
3・新要素があるのが嬉しい
4・信長の野望なのに武将がいない!
5・オンラインマニュアルが欲しい
6・この時代にこれは厳しい
7・ゲームバランスが悪く、難しい
8・値段が高すぎる
ざっと見たところ、上記の意見がよく見られた。
総合してみると、全国版に少し付加要素を加えて発売したものの、「今の時代では難しすぎ、さらに説明不足すぎで不親切」で、「何も知らない人がプレイすると値段に見合わないゲーム」で、「昔を懐かしむならOK」ということだろう。
しかし、一番重要な点は「ブランドから想像されるサービスを提供していない」ということである。
「武将がいない」ことが多く言われているということは、コーエーの信長=武将を配下にして戦うSLGというブランドができているということ。
「全国版の移植だから」という言い訳は、そんな古いゲームを知らない多くのユーザーには通じない。
アプリ説明を見ても武将がいるのかいないのかわからないし、古いゲームと推測するには見た目が最近のゲームそのもの。
完全に非があるわけでもないが、宣伝の仕方が悪くて「ユーザーがブランドに対して求めているもの」を裏切ってしまった一件と言えるだろう。

と、このように一見荒れていてもAppStoreのレビューは情報の宝庫である。
加えて言えば、この推察を裏付けるかのように普通に想像される武将と君主の中国統一ゲームである三國志2はユーザーの期待通りの内容で評価は上々である。
というのは、自分の推察を正当化し過ぎかもしれないが。


日本のAppStoreレビューはひどくもない。
さて、日本のAppStoreのレビューと言えば、「ひどい」というイメージがあるとよく聞く。
それは明らかに間違いで、WWDCへ殺到する開発者達 後日レポートの「こんな理由で低いレビューを付けると損ばかり」という項目が(執筆者が想定していないほど)拡大解釈されてしまった結果だと思う。
私の思うところでは日本のAppStoreのレビューはそこまで悪くない。
1つデータをだそう。
以下は、4つのゲームでレビューに「意味のない」ことが書いてある割合である。
意味のないとは、レビューからユーザーが満足した・不満のあるサービスが読み取れないレビューのことだ。
「とにかくクソ」「面白い」などがこれに当たる。
「日本語じゃないので★1」「簡単すぎてダメ」「音が良いので★5」など具体的に理由が書いてあるものからは全て理由が読み取れるのでOKとしてある。
chaosrings01
今回サンプルはChaos Rings、ストリートファイターIV、DARK QUEST2、信長の野望全国版の4つとした。
もっと多くのサンプルをとりたかったが、手作業でこれ以上は大変だったので抽出する形にした。
また韓国語に関しては自動翻訳の上判定した。
さて、悪ノリが多くてひどいとされる日本のレビューはどんなもんだろうか。

タイトルJP StoreUS Store
CHAOS RINGS18/2555/162
ストリートファイターIV15/1114/117
Dark Quest 23/245/222
信長の野望全国版7/571/12
(/区切りの数字は理由のない評価数/現バージョンの全レビュー数)

なんと、日本ストアでは役に立たないレビューは10%未満、USストアでは3%程度、という結果だった。
荒れている、と言われていた「信長の野望」ですら悪ノリレビューも特に見かけられない。
確かに日本のユーザーは理由を書かずに評価する傾向はあるかもしれないが、ひどいということはなく、その90%は役に立ち、開発者が一番参考にできるデータの1つと言えるだろう。


日本の★5は価値が高い
レビューを見ていて気づくのは、日本人のレビューは「基準が高い」であるということ。
USは「○○が最高★5」というのが多いが、日本人のレビューは「すごいいいアプリです、★4」などが結構見かけられる。
「日本のアプリ評価は低くなる」というのは、単純に日本人が★5に対して厳しい基準をおいているからと思われる。
USで評価が高くても日本でいまいちなものは結構あるが、逆に日本で評価が高くてUSで評価が低いものはあまり見かけない(主観なのでデータが出せなくて申し訳ない)。
これはどちらが悪いとかではなく、単純に性質の問題。
根本的に言えば、きっちりとした統一的基準を示せないAppStore側の問題ではないだろうか。
開発側は「日本人はアプリの質の評価に厳しいが言うべきことは言っている」という前提で真摯にアプリ開発に望むのがいいと思う。
逆にユーザー側は「不当な評価をしないようにしつつアプリに理由をつけてレビューする」するのが一番、ということになる。
世間では「日本語ではないので」評価を減じるのに賛否両論あるが、これも1つの意見だと思うし(逆に翻訳をきっちりすればゲームロフトのように海外メーカーでも支持される分かりやすいサービスである)、思ったことを恐れずに、失礼にならないように書けばいい。
ユーザーがレビューをし、開発者が応える循環が出来ればアプリ開発の未来は明るいと思う。
ちょっぴり「WWDCへ殺到する開発者達 後日レポート」に反論めいたことも書いたが、いきつく先は同じであった。

サポートをきっちり行うことや、アプリの内容と関係なくブランド価値が上下する例が存在する。
次回はAppStore外でのブランド構築とそれに付随するリスクについて書いていこうと思う。

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