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2010年AppStoreゲーム年末商戦の覇者は?

年末商戦の覇者は?
まだ12月が終わらないうちに書くのもなんだが、2010年12月9日、16日はAppStore史上稀に見る激戦だった。

「ファンとレビュアーのサポートに感謝します。
 しかし、悲しいことにAppStoreでの売れ行きは芳しく有りません。
 リリース時期が悪かったのです」
(Rocketcat Gamesの公式ツイート、訳はトシ)
Rocketcat gamesのツイートはこの状況を端的に表している。
あまりに多くのゲームが発売されすぎ、値下げがありすぎた。
じゃあ、どこで何が売れていて、何が売れなかったの?
という疑問が湧いてきたので12/19のデータを元にちょっと調べてみた。


12月発売の主なタイトル
まず、この時期に発売された主な注目タイトル(偏見含む)を集めてみた。
12月9日(各タイトルの画像付きはこちら
Infinity Blade(700円)
Puzzle Quest 2(1200円)
インフィニット レガシー(800円)
RAGE HDRAGE(230円/115円)
Riven: The Sequel to Myst(600円)

12月16日
(画像付きの紹介はこちらこちら)
Real Racing 2(1200円)
Aralon: Sword and Shadow HD(800円)
Dungeon Defenders: First Wave(350円)
N.O.V.A. 2 - Near Orbit Vanguard Alliance(800円)
シャドーガーディアン(800円)
Hook Worlds(115円)
BATTLEFIELD: BAD COMPANY 2(115円)
Lara Croft and the Guardian of Light(800円)
ゴースト トリック(基本無料、アドオン1200円で全話プレイ可能)
グランド・セフト・オート: Chinatown Wars(800円)
ゆけむり温泉郷(450円)
その他
SD ガンダム Gジェネレーション TOUCH(アドオンで1000円)
Dark Quest 2(800円)


日本王者は日本のゲーム
まず、日本AppStoreの主なゲームのランキングを整理してみよう。
有料アプリDL本数ランキング
20101216sale34
1位に湯けむり温泉郷、BattleField:Bad Company 2、バイオハザード4、テトリス、FIFA11、Where's Wally、EA総合格闘技、Mirror's Edghと続き、50位以内を見回してみるとInfinity Blade、インフィニット・レガシー、Real Racing2などが新作では入っている。
トップセールス
20101216sale31
1位がゴーストトリック、次いでゆけむり温泉郷、SDガンダムGジェネレーション、グランド・セフト・オート・
10位圏外でも続いてReal Racing2、テトリス、Battlefieldなどが上位に食い込んでいる。
インフィニット・レガシーも25位程度と健闘。
少し前のランキングではInfinity Bladeとインフィニット・レガシーが上位(と言ってもInfinity Bladeは圧倒的な1位)にいた。

総じて見ると日本語ソフトの強さが目立つ。
日本語訳されていないゲームはWhere's WallyとReal Racing2だけ。
その2作品も、英語がわからなくても問題ないつくり。
海外ではランキングに入りもしない「クイーンズクラン」が100位以内入りするなど、全体的な傾向としても「日本語ゲームが強い」と言って差し支えないと思う。
日本でサービスするなら日本語ということだろう。

残念ながら私は企業の中の人ではないので、どこからが成功かわからない。
それでも、ランキングから見る勝者は間違いなく「湯けむり温泉郷」「ゴーストトリック」「SDガンダムGジェネレーション」だ。
その他の新作は発売時こそランキング上位に登っていたが、それ以降は順位を落としてしまっている。


USは?
USでも状況は似ている。
ゴーストトリック・湯けむり温泉郷・SDガンダムGジェネレーションが発売されていない分、DL本数ランキングはEAのセール品ばかりが目に付く状況。
トップはBattlefield。
20101216news06
売上でもBattlefield、N.O.V.A2、Infinity Bladeがトップ10入りしており、Real Racing2も上位。
AngryBirdsなどの定番新作も相変わらずトップ10にいる。
Battlefiledが売上・DL数共に1位というのは値段が0.99¢に設定されているだけに驚き。
FPSが強いUSだけあってよほど売れているのだろう。
日本では100位以下のAralonが21位にいるのも注目(発売時はきっちりトップ10入りしていた)。
英語の大作RPGは英語圏ではきっちり売れるということか。
だが注目の新作群に関しては発売時のみランキング25位以上で、その後軒並み50位以下という結果になった。
それでもゲームロフトのゲームに関しては100位以内に付けているのでまだましな方か。
インフィニット・レガシーも100位以内と検討しており、J-RPGというジャンルは未だにUSでも健在のようだ。


売れたゲーム、売れないゲーム
特にInfinity Bladeは発売3日で160万ドルを売りあげており、単品の売上では間違いなくトップ。
しかも、日米どちらのストアでもトップクラスの売上をその後も維持し続けている。
続いて売れているのはBattlefield。
単価が安いものの、やはり日米どちらの市場でもトップorトップクラス。
Real Racing2は値段にもかかわらずどちらの市場でもやはり売れている。
N.O.V.A2はUSではベスト10内、日本でも50位以内に位置する。
湯けむり温泉郷とゴーストトリック、グランド・セフト・オートは日本のみだが、トップクラスの売れ行き。
インフィニット・レガシーは発売時期に日本では大売れし、その後も25位程度。
ここまでが勝利者と言えるだろう。
しかし、ゲームロフトのシャドーガーディアンはそこそこ(それでも、人によってはAppStoreの歴史に残して良いと言うほどの出来だとは思う)。
Dark Quest2、Hook Worlds、Aralon、Lalacroft、Dungeon Defenderは微妙な売れ行きで、Rageは初期は売れていたものの失速も早かった。
特にDungeon DefenderはUSですでに100位圏外、日本ではランキング入りすらしていない。
ゲームロフト以降が振るわなかった組か。
Dark Quest2は1の売れ行きに比べあきらかに売れておらず、大作ラッシュによる「ゲーム購入疲れ」の影響を受けていると思われる。
はっきり言ってどのゲームも発売日がかぶらなければもっと売れた可能性があっただけに残念。


最も多く売ったのはEA
現時点では、年末商戦の覇者はEA。
Battlefieldの売上・DL数は日米共にトップクラス、そして各セール品のゲームも軒並みベスト50位以内に喰い込み、ゲームのランキングをほぼ独占している。
「AppStoreは値下げしてランキング入りするほどいいんだよ!」
という説を地で行った感じ。
続いてInfinity BladeとReal Racing2。
少し目立たずにゲームロフトか。
ゲームロフトは今回の新作布陣に絶対の自信を持っていたと予想されるが、それにしては振るわない結果が出てしまったのではないだろうか。


華々しい売上の影に
ただ、EAの華々しい戦果の影で懸念されることがある。
「足を引っ張り合う値下げ合戦」だ。
値下げは別にいい。
だが、ゲームロフトもEAも「他社の新作にかぶせて同ジャンルのゲームを値下げする」という手法をよく取ることで有名。
その結果「良質な新作ゲームが正常に売れなくなってしまう」ことが起こりえるのだ。
ドラクエを買いにゲーム屋に行って、「ドラクエ最新作が8000円!でも前に出たFFは500円に値下げ中です!」と張り紙をしてあったらどうだろう。
FFをプレイしていないユーザーの何割かは「ドラクエは安くなってからでいいや」とFFに手を出してしまうのではないだろうか。
今回、115円としては破格といえど、EAの看板シリーズとしてはBATTLEFIELDの出来がいいとは言いがたい。
しかし、そんなBATTLEFIELDでも115円で売りだしたことにより、N.O.V.A2の売上が格段に落ちたのは間違いないところ。
それどころか、大量セールでReal Racing2、Aralonのように強力なブランド・ファンがあるゲームともかく、Dark Quest2、Hook Worlds、Lalacroft、Dungeon Defender、シャドーガーディアンなどブランドが弱い・全く新規のゲームは散々な売上。
Lalacroft以外のゲームはひと通りプレイしたが、どれも出来はそこそこ良くそれなりに売れていいはずのゲームだった。
単に利益を上げるためではなく、足の引っ張り合いをする値下げを繰り返すことで新作から正当な利益がえられなくなり、iPhone/iPod touchのゲーム市場が正常な発展できなくなることが懸念される。


総括
こういった記事を書こうとすることがなかったので「何が言いたいのか分からない」感じになってしまったものの、日頃、英語のゲームもきにせずやっているせいでわからなかった「日本では日本語のゲームが売れる」という単純なことや、海外でも日本でも質の高いゲームには需要のあること、定番ゲームは異なってくることなど、目からウロコの事実も、やはりそうだったかという確認もできた。

また、昨年からゲームロフトはEAの質の高いゲーム群に対して値下げ攻勢で押し切っていたが、今回は逆にゲームロフトが質の高い新作を出し、EAが値下げで押し切るという展開になったのは興味深い。
このまま値下げ合戦が起きそう…とにわかで予想してみるが、あまり値下げに走ると新しい良質作品の目を潰すことになりかねないのが懸念される。
あまりに市場原理がダイレクトに支配しすぎるAppStoreのシステムは将来的に不幸を呼ぶことがないか、これからも観察を続けていきたい。

今回の激戦を事例に、要所要所で各社がどう売ってくるのか、また比べてみたい。